「お寺の窓口賞」は広島の超覚寺に
本連載も、今回が2019年最終回となりました。これまで「お寺の掲示板大賞2019」受賞作として、大賞以下7つの掲示板を取り上げてきました。今回は残りの3作品をご紹介させていただきます。
「お寺との良いご縁を見つけるサイト」がキャッチフレーズの仏教・寺院情報サイト「お寺の窓口」による「お寺の窓口賞」は、広島市中区にある真宗大谷派の超覚寺「私」に決まりました。
この掲示板、よく見ますと「私」という一字が黒と青のマジックで描き分けられています。「私」から青字の部分を取り除くと「仏」という文字になります。こんな講評をいただきました。
2つの意味があると感じました。1つ目は悉有仏性を一文字で現していて、仏語をしらなくても、直感的に理解できる。2つ目は私の中に仏性があるという意味ではなく、仏様はいつでも寄り添ってくれている。1文字の中に2つの意味が感じられ、仏教が更に身近に感じられる掲示板だと思いました。
『大般涅槃経』というお経の中に、「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」という言葉が出てきます。これはつまり、すべての生きとし生けるものの中に「仏性(仏になる性質)」が存在するということです。この思想は日本仏教や日本人の価値観に多大な影響を与えました。
講評にもあるように、確かにこの言葉は2つの解釈が可能です。仏になる素質がわたしの中にあるという点、仏さまはいつでもそばにいらっしゃるという点。2020年は「仏」の存在をいつも身近に感じられる生活を送りたいものですね。
「寺子屋ブッダ賞」は東京・八王子市の延立寺に
「お寺は僕らのワクワク空間」と、さまざまなイベント活動を行っている一般社団法人寺子屋ブッダには、浄土真宗、日蓮宗、臨済宗など、宗派を超えた僧侶が集まり、会社経営者や研究者など多彩な理事が運営に携わっています。
「寺子屋ブッダ賞」は東京・八王子市にある浄土真宗本願寺派延立寺の掲示板「隣のレジは、早い。」に決まりました。
日常に潜む苦(思い通りにならなさ)を、パロディーの手法で見事に表現している作品ですね。こうやって、我々はいつも自分の心の中で苦を生産しているんだなと、レジの情景を思い描きながら心底実感させていただきました。
「隣の芝生は青い」などの似た表現がありますが、講評でも触れられたように、この言葉が非常にしっくりくるという意見が数多く寄せられました。みなさんもスーパーやコンビニなどでこのように思ったことが、人生の中で必ず何度かあるのではないでしょうか?
第63回目の連載で詳しくご紹介していますので、よろしければご覧ください。
「笑い飯哲夫賞」は静岡の鳳林寺に
お笑い芸人の笑い飯哲夫さんによる「笑い飯哲夫賞」は、静岡市清水区にある鳳林寺の掲示板「きみが本当に正しいと思うなら叫ばなくて良い」です。
鳳林寺のサイトにこの文言の解説が掲載されています。それによると、この言葉は令和元年9月15日付『朝日新聞』の天声人語から来ているそうです。
サイトには、「庶民の小さな声を集めたと言って、大きな声で叫ぶ人がいますが、それは小さな声を自分の良いように解釈し利用し、主張している場合が多いので注意が必要です」と書かれていました。
この掲示板に関しては第62回目の連載でご紹介させていただいておりますので、どうぞご覧ください。
2019年も掲示板の連載にお付き合いくださり、誠にありがとうございました。みなさま、良い年末年始をお過ごしください!
「輝け!お寺の掲示板大賞2019」たくさんのご応募ありがとうございます。
当連載をまとめた書籍『お寺の掲示板』が9月26日に発売され、さっそく増刷となりました。お手に取ってご覧いただければ幸いです。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)