ひと昔前まで、スポーツファンは12月の第1日曜日を心待ちにしていたものだ。この日は福岡国際マラソンとラグビー関東大学対抗戦の早明戦が行なわれるからである。
福岡国際は国内外の男子トップランナーが顔を揃え、記録と勝負の両方が楽しめる好レースが期待できた。早明戦は日本ラグビー界の看板カード。毎年のように名勝負が見られた。正午過ぎにスタートする福岡国際を見て、結果が判ったら、早明戦を観戦する。これが多くのスポーツファンの師走の第一日曜の過ごし方だった。
ところが今は違う。どちらも昔と変わらずテレビ中継されるが、「暇があったら見ようか」といった程度に価値が下がってしまった。
福岡国際の場合は瀬古利彦、中山竹通のように世界のトップと対等に戦える日本ランナーが見当たらなくなったのが原因だろう(その代わり外国勢は相変わらずすごいメンバーが揃う。昨年の優勝者サムエル・ワンジルは北京オリンピックで金メダルを獲ったし、一昨年の優勝者ハイレ・ゲブレセラシエは今年9月のベルリンマラソンで2時間3分59秒の驚異的な世界記録をマークした)。
だが、マラソンでは突然、新星が現れることがある。そんな有望株が出現すれば、すぐに注目度はアップするはずだ。
2強対決の構図が崩壊。
魅力を失った「早明戦」
一方、早明戦。90年代までの人気はすさまじく、会場の国立競技場は超満員になったものだ。収容人数を超える6万6999人という国立競技場の最多入場者記録を作ったのもこのカード。チケットは入手困難で「プラチナペーパー」とさえいわれた。
しかし、最近は空席が目立つようになり、チケットは当日でも買える。ちなみに昨年の入場者数は4万2679人。テレビ中継の視聴率は3.3%だった。4万を超える観客動員があるのは立派ともいえるが、その多くは両校の関係者。伝統の一戦ということで、お祭り気分で観戦に来るのである。
かつての早明戦人気は両校の関係者を超え、一般のスポーツファンも取り込んだものだった。大学ラグビーでは早稲田と明治の実力が抜きん出ており、対抗戦は両校が全勝で早明戦を迎えるのが当たり前。加えて「重量フォワードを主体としたタテ突破の明治」、「バックスによるヨコ展開の早稲田」という対照的なチームカラーを持ち、見る人はそれぞれ共感が持てるチームを応援した。タイプが異なる両雄の激突に人々は熱狂したのである。
人気低迷の原因はこの「2強対決の構図」が崩れたことにある。大きいのは明治が弱くなったことだ。1998年以来、9年間優勝から遠ざかっている。早稲田に次いで2位になるのならまだしも、慶応や帝京、筑波に敗れて3位・4位に沈むこともあった(8校中)。昨年は久々に早明戦での無敗対決が見られたが、結果は71-7のスコアで早稲田に大敗。これでは見る方もシラけてしまう。