アップルの大量受注という追い風は、いつまで続くのか──。
世界最大の家電メーカーに君臨している米アップルが、今年10月に発売すると囁かれる新型スマートフォンの「iPhone5」。その主要な部材である液晶パネルをめぐり、日本の電機業界が固唾をのんで見守っていた企業がある。
それはジャパンディスプレイ。今年4月、ソニー、東芝、日立製作所という大手電機メーカー3社が、傘下にあった三つの子会社を統合させてつくった、中小型液晶ディスプレーの専業メーカーだ。
同社は、官民ファンドの産業革新機構が政府保証付きの2000億円を注入しており、失敗が許されない“日の丸プロジェクト”だ。全国に6工場を抱えるが、「日本の携帯電話メーカーのシェアが低下する中、急成長するアップルの受注がなければ、生産ラインは埋まらない」(業界関係者)というほど、アップル依存を強めている。
関係者によると、ジャパンディスプレイは幸いにも、今秋のiPhone5の液晶パネルの受注に成功。現在は「第1サプライヤー(供給者)として、月産800万枚の体制に向けて、毎日がてんてこ舞い」(業界関係者)の状態だという。
この足元の好調を千載一遇のチャンスとみているのが、出資者である産業革新機構だ。
当初はジャパンディスプレイの設立3年以内の上場を目安としてきたが、ここにきて「好調な今のうちに上場させようと焦っている」(大手証券関係者)という。
すでに主幹事となる証券会社の絞り込みをしている最中で、「7月中にも主幹事社が決まり、来年には上場できるかもしれない」(同)という、異例のペースで準備が進んでいる。
急ぐ理由は、明白だ。アップルからの大量受注が、これからもずっと続く保証はないからだ。