苦味、酸味、甘味、深味、コク……1杯のコーヒーから感じられる味わいは実に複雑だ。「美味しさ」は、結局のところ飲む人の好みに大きく左右されるもの。しかし、知識のない初心者でも、プロが認める「正しい品質の美味しさ」を知っておきたい、という人はいるだろう。そんなとき、最初に知っておくべき最もシンプルかつ強力な判定基準とは?
日本テレビ系列『嵐にしやがれ』、NHK『逆転人生』にも出演し話題沸騰のワールド・バリスタ・チャンピオン、井崎英典氏が書き下ろした『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』から、その内容の一部を紹介する(撮影:京嶋良太)。

コーヒーの味わいを表現したり、評価したりすることは非常に難易度が高いと言えます。コーヒーのプロである私たちも頻繁に悩んだり、間違えたりしつつ、日々勉強を続けています。

コーヒーの味わいに正解なんて存在しないのかもしれません。当然、国際標準として語られている品質基準は存在しますが、その基準は、時と共に移り変わるものです。

特にその傾向が顕著なのが、エスプレッソの世界でしょう。世界から60カ国以上の各国代表のバリスタが集まり、味わいや抽出技術、プレゼンテーションを競う、世界で最も権威ある大会、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップにおいても、評価されるエスプレッソは年々変化しています。

例えば、私が2007年に大会に出始めた頃に評価された味わいは、チョコレートのようなフレーバー、ボディがあって、ある程度苦味もあるエスプレッソでした。

しかし現在は、フルーツや花の香りを連想させるフレーバー、浅めの焙煎で酸味と甘みのあるエスプレッソが求められています。細かいことを言うと、毎年好まれる、または評価される味わいは絶え間なく変化しているのです。

前置きが長くなりましたが、「コーヒーの品質的な正解や嗜好は日々変化している」と言うことを前提にコーヒーと向き合ってもらえると、肩肘張らずにコーヒーを楽しんでいただけると思います。

とはいいつつも、コーヒーの味を客観的に捉えるスキルは必ず必要になってきますので、まず「コーヒーの味わいをどう評価すべきか」について答えていきたいと思います。

最も簡単な評価方法は、「冷めても飲めるコーヒーであるか、否か」です。拍子抜けしたかもしれませんが、この方法が最も確実で、正確に品質の可否を判断できる方法なのです。

ちなみに、素晴らしい品質のコーヒーは冷めても飲むことができますが、品質、または抽出に問題があると、エグ味だったり、収斂性を感じる味わいが突出し、飲み干すことに苦労する、もしくは飲み干すことができません。

論理的に評価を導き出すことも可能ですが、まず味わいを評価する第一歩として「冷めても飲めるか?」という基準を1つ設けておくと、品質の判断が付きやすくなると思います。

なお、「自分好みの味」を正しく把握する考え方については、第3回で詳しく解説しています。「酸味・苦味」と「濃い・薄い」の2軸から好みの味を位置づける、私が独自に考えた「味わい判定表」を公開しています。

これを使えば、うまく表現できなかった好みの味をわかりやすく捉え、自分好みの理想的な1杯へを見つけることができるはずです。