「起業」は自身の原体験から始めるもの

小林:勝機があるというよりも、自分自身が楽しいと感じ、欲しかったからChompを作ったという感覚かもしれません。

朝倉:自分が一番求めているものを作っているということですね。

小林:はい。そもそも起業家というものを考えた時に、起業しないといけないから事業を考えるというのは本末転倒な気がします。もともとの起業家のルーツは、すごく重い課題、極端に言えば、家族などの身近に病気を抱えている人がいて、その人の病気をどうしても治したくて、どうやって治すかを考えた末に「他の人がやらないから自分がやるしかない」、あるいは、先に話したように、「自分だけが信じている何か」があって、それがあれば世の中が絶対良くなるのに誰もやっていない、だから自分がやるというような強い気持ちですよね。

そんな中で、「何のプロダクトをやろうかな」と悩む人が多いのは、自分の原体験よりも、起業することを前提としてプロダクトを選択しているからではないでしょうか。

仮に、市場のトレンドからプロダクトを考えるとしても、米国の投資家など、誰かが仕掛けているからトレンドになっているわけで、世界中でニュースの記事になるような段階では、もうタイミングが遅いのかもしれません。

朝倉:起業することが目的化してしまう人は多いかもしれませんね。

小林:そうだと思います。なので、僕自身も、シリコンバレーに行き、自分が欲しいもの、かつ世界中の人たちにも使ってもらえるもので、自分が作らないと世の中に存在しないものを作ろうと本質に立ち戻りました。

朝倉:それは非常に本質的ですね。原体験に紐づいている人は強いし、成功するまでに苦労をしたとしても、粘れます。

小林:自身の原体験に紐付いていると、それに共感してくれる仲間も見つけやすいし、自分が熱狂的にストーリーを語れるので投資家も惹きつけやすいと感じています。