たとえば年金については、年金財政を安定させるために必要な改革は支給開始年齢を一律に70歳に引き上げることです。65歳から年金を受給すると、平均寿命から男性は16年、女性は22年も受給することになり、他の先進国の平均10年と比べて長過ぎます。

 他の先進国が国民を説得してすでに受給開始年齢を67~70歳に引き上げていること、選択的に75歳から受給できるようにしても、そもそもそれを選択する人は多くないであろうこと、そして給付額を増やすと年金財政は改善しないことを考えると、年金改革の王道である支給開始年齢の引き上げに取り組むべきなのです。

70歳まで雇用継続を
求めることは正しいのか

 雇用については、社会保障制度の持続性の観点からは高齢者の就労を促進することは正しいですが、問題は企業に70歳までの雇用継続を求めるのがその手段として正しいかということです。

 終身雇用に代表される日本型雇用の限界がこれだけいわれている中で、その維持と延長を求めるのは、逆に雇用の流動化を妨げるのみならず、大企業正社員とそれ以外の格差を拡大するだけです。それよりも、定年の廃止、正しい同一労働同一賃金の実現、解雇規制の緩和など、雇用の流動化に資する改革を進めることが、高齢者雇用にも貢献するはずです。

 そして医療については、とにかく内容がショボ過ぎます。現状、現役世代の医療保険料のうち23%が75歳以上の医療費のために使われています。65歳以上の医療費だと46%にもなります。この現役世代の大きな負担を軽減することが必要なので、すでに夫婦世帯の場合で年間520万円以上の収入があれば、年齢に問わず3割負担になっていることを考えると、さらに新たな所得基準を設ける必要などないはずです。

 そもそも、74歳まで2割負担できていた人が75歳になって突然負担できなくなるなど考えられません。このように考えると、これまでの改革と同様に、今回の改革もかけ声ばかりが勇まく、内容はまったく伴っていないと言わざるを得ないのです。