テストの点で測れない「非認知能力」=「考える力」「やり抜く力」「折れない心」の土台は、親が子どもの話を聞くことから作られる! 『自己肯定感で子どもが伸びる12歳からの心と脳の育て方』の著者で、30年以上臨床の場で多くの親子を見続けている医師が断言します。本連載では、子どもの脳を傷つけないで「あと伸びする子」に育てるためのノウハウを、著者が接してきた実例とともに紹介していきます。子どもへの接し方に悩むすべての大人、必読!

「どうせ」「私なんか」……。虐待や育児放棄を受けても「自己肯定感」が回復した!Photo: Adobe Stock

「自己肯定感」は変えられるし、
そもそも変動するもの

 小さいころからよくない環境に置かれて「自己肯定感」が育ってこなかった子どもは、もう自信を持つことはできないのでしょうか? 「自己肯定感」は一生変えることのできないものでしょうか? 答えはノーです。

 脳には可塑性(かそせい)といって回復する性質があり、その後の他者のかかわり方によって、「自己肯定感」を育てることができるのです。一度失った自信を取り戻すなんて、そう簡単にできっこないと思われるかもしれませんが、大丈夫なのです。

人の話をよく聞き、
自分の言葉で表現し、
自分を認められる体験が大事

 児童養護施設での取り組みの例をご紹介しましょう。近年の虐待の増加によって、施設に入所する子どもの約6割が虐待やネグレクト(育児放棄)の体験を持っています。自立支援としてゲーム感覚のコミュニケーショントレーニングを行っているグループに協力していただき、その子どもたちにトレーニングの効果について実験を行いました。

 約3ヵ月のトレーニング実施前と実施後の2回アンケートをとって両者をくらべてみると、実施後には「自己肯定感」の得点が大きく上昇していました。虐待を受けた子どもの「自己肯定感」は概してたいへん低いのですが、トレーニングによって彼らの「自己肯定感」の得点が、一般の子どもたちと肩を並べるまでに上昇していたのです。

 虐待を受けた子どもであっても、人の話をよく聞き、自分の言葉で表現する練習や、自分を認められるという体験を積み重ねることで、「自己肯定感」が育っていくということです。

 子どもの脳は、時間をかけてゆっくり発達していきます。「どうせぼくは……」「私なんか……」という否定的な言葉を口にすることが多く、何事にも意欲を持てない子どもであっても、大人のかかわり方によって「自己肯定感」は育っていくのです。

 国内外の調査ではいずれも、「自己肯定感」は10代でもっとも低下し、その後上昇して60代もしくはそれ以降がもっとも高くなるという結果が得られています。また個人個人を年齢とともに追っていく調査でも、同じ結果が得られています。