日本製鉄が、新日本製鐵と住友金属工業の統合以来、維持にこだわってきた生産能力の大幅削減に動く。今回休止の対象となったのは呉製鉄所(広島県)などが中心だが、改革はこれで終わりそうもない。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
「俺は嫌われてもいいんだ」。鉄鋼最大手の日本製鉄(旧新日鐵住金)の橋本英二社長はここ数カ月、覚悟を決めたようにこの発言を繰り返していたという。
まさにその覚悟を形にして示したということか。2月7日、日鉄は生産能力の大幅削減を発表した。主な施策は、現在は完全子会社で、4月1日に吸収合併する日鉄日新製鋼の呉製鉄所(広島県)の2023年9月末までの閉鎖。そして、和歌山製鉄所の第1高炉の22年9月をめどとした休止だ。
全工程の一貫休止(呉)や、09年に火入れしたばかりの新しい高炉の休止(和歌山)といった異例の合理化を行うことで、年間約1000億円の収益改善を図る。
だがそれと引き換えに、新日本製鐵と住友金属工業が統合して新日鐵住金が誕生して以来、「こだわり過ぎだと思うほど維持にこだわってきた粗鋼生産量」(金融筋)は年間約500万トン(連結ベースで10%相当)減少する見込みだ。