それは、第1に、冷戦終了後の米国内で、経済力を強化してきた日本に対して脅威論が強まったことである。
第2に、そのベースとして、1971年にキッシンジャーと周恩来が「日本は危険な国だ」「経済成長を抑えるべきだ。そうすれば軍事的進出を抑えられる」という点で合意し、米中共同で「日本封じ込め」の密約を結んでいたからである。
東アジアのバランスが崩れる
米国の対日基本方針は、米中密約による「危険な国・日本」の封じ込めであり、この方針は不変である。しかし財政難に陥っている米国は、東アジアのシーレーンの覇権維持のために日本の自衛隊を使いたいと思っている。
こうしたなかで米国のトランプ大統領は「憲法9条は破棄させない」が、改憲したいなら「9条を維持したまま、憲法に自衛隊の存在を追加することは認める」という考えを示唆したと見られる。
日本はオバマ大統領の要請によって、2014年7月に「日本は限定的ながら憲法第9条の下でも米国との集団的自衛権行使を容認できる」という閣議決定をしていた。
そこでトランプは、日本の自衛隊には軍事主権を与えないが、米軍の補助(傭兵)として西太平洋防衛に使えるようにしようと考えているのだ。
この流れに乗って安倍政権は、インドと包括的な防衛協力(事実上の軍事協定)を締結し、中国包囲網の一環として自衛隊をインド洋まで出向かせた。
また自衛隊が南シナ海、フィリピン海峡で米軍と軍事演習(仮想敵国は中国)を行っている。中国は「日本は専守防衛違反だ」と言っており、日本のこうした行動は極めて大きなリスクをはらんでいる。
東アジア、とくに極東アジアは、米国と中国、韓国と北朝鮮、それにロシアの権益が交錯する地域であり、米国の衰退と中国の台頭で、地殻変動が起きている。
地政学的に日本の立地条件は、米国・中国・ロシアという三大国家の利害が衝突する北東アジアに位置している。さらに日本は、中国と韓国とは平和条約を交わしているものの、相互に「和解」しているとは言いがたく、北朝鮮とはいまだに外交関係がない。
日本は極めて不安定な条件のなかにある。