米配車大手ウーバー・テクノロジーズの創業者トラビス・カラニック氏は5年前、ライドシェアが普及すれば、人々は車を自宅に置き去りにするだろうとテクノロジー会議で自信満々に語った。「サンフランシスコの車が全てウーバー化すれば、交通渋滞の問題はなくなる」
現在、その逆を示す調査結果が相次いでいる。交通量を減らすどころか、ウーバーや同業大手のリフトが米国の多くの商業地区で渋滞を悪化させているというのだ。
サンフランシスコやシカゴ、ニューヨークの当局者は、最近、各都市でリフトやウーバーの乗車運賃への新たな課税措置が導入された主な根拠として渋滞を挙げている。全米の他の規制当局も同様の課税を検討している。ウーバーやリフトは渋滞を加速させたことを認め、もはやライドシェアが交通量を減らすとは言わなくなった。ただ、一部の調査では両企業がこの問題に果たした役割を誇張していると主張する。
両社は当初、見知らぬ4人の客が自家用車をやめて1台の車に相乗りする形で、切れ目ない移動を実現できると考えていた。最先端アルゴリズムによる価格設定やルート最適化を通じて乗客をうまく誘導し、ドライバーは時間の無駄なく客を乗せられるはずだった。自宅に車を置いて出掛ける乗客は次第に、バスやオートバイ、徒歩も採り入れるようになり、渋滞緩和の波及効果が生まれるというわけだ。
だが、この理想郷は実現していない。
リフトやウーバーを利用する大半の客は自分たちだけで乗車し、多少コストがかかっても他人との相乗りを敬遠する。また、配車アプリがアルゴリズム主導の効率重視モデルとなるどころか、主要都市のドライバーは稼働時間の推定40%は客を乗せずに走行している。
複数の調査によると、ウーバーやリフトは人々がバスや地下鉄、徒歩から遠ざかるのを助長し、配車アプリのせいで米国全体の走行距離は増えている。
サンフランシスコ郡当局とケンタッキー大学の研究チームが昨年、学術誌サイエンス・アドバンシーズに発表した調査結果によると、サンフランシスコで2010~16年に交通スピードが落ちた原因の60%以上を配車サービス企業の進出が占めるという。