「感情」を動かす“たったひとつ”のストーリー
「感情に訴える」というと、難しく聞こえるかもしれません。しかし、たったひとつの「型」を覚えるだけでOK。それを身につければ、誰でも「感情」を動かす資料をつくることができるようになります。
その「型」を図示したのが下図です。
ここにあるように、「1共感」「2信頼」「3納得」「4決断」という4つのステップを、聞き手にたどってもらえるように全体を構成していきます。
まず、「そうそう、それで悩んでるんだ」「これは、自分の問題だ」と共感してもらわなければなりません。そして、「この人の話は聞く価値がありそうだ」と信頼してもらえる情報を提示したうえで、「この人の言うとおりにすれば、たしかに問題は解決しそうだ」と納得してもらえる情報を連打します。さらに、「よし、やってみよう」「詳細の商談に入ろう」と決断してもらえるように背中を押すわけです。
この4つのステップで聞き手の感情を導くことを意識しながら、スライドを構成していけばいいのです。
抽象的な説明ではピンとこないと思いますので、早速、実例をご覧いただきたいと思います(下図参照)。
この営業プレゼンは、紙カタログによる営業活動をしている会社に、タブレットで商品カタログを提示できる「デジカタ」という商品を売り込むものです。「1課題→2原因→3解決策→4効果」というロジックに、「1共感→2信頼→3納得→4決断」というストーリーが重なっていることがおわかりいただけるはずです。
私は、ソフトバンクなどで営業の第一線で仕事をしてきましたが、このストーリーを組み上げたプレゼン資料をつくることで、お客様の反応が劇的に変わることを身をもって体験してきました。この「秘密」をお試しいただければ、徐々に成績がよくなっていくと確信しています。
なお、営業プレゼンも基本的には3~5分で終わらせるようにしますが、相手の感情に訴えるためには5~9枚のスライドでは足りません。スライド1枚の表示時間は「平均約6秒間」が適切ですが、3~5分の営業プレゼンでは本編スライドだけで30~50枚、説明会では100枚を超えるスライドが必要になるケースもあります。
また、先ほどのスライドを見てお気づきだと思いますが、社外プレゼンでは、「画像」を多用するほか、紙面では伝わりませんが、随所にアニメーションを施しています。相手の「感情」「直感」を刺激するためには、「画像」「アニメーション」がきわめて重要だからです。「画像スライド」のつくり方や「アニメーション」の設定方法は、『パワーポイント最速仕事術』で、詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。
1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会、経営戦略部門において中長期計画の策定、渉外部門にて意見書の作成など幅広く担当する。
2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認されたほか、孫社長が行うプレゼン資料の作成も多数担当した。ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍したのち、2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』(ダイヤモンド社)を刊行して、ビジネス・プレゼンの定番書としてベストセラーとなる。
2016年株式会社固を設立。ソフトバンク、ヤフーをはじめとする通信各社、株式会社ベネッセコーポレーションなどの教育関係企業・団体のほか、鉄道事業者、総合商社、自動車メーカー、飲料メーカー、医療研究・開発・製造会社など、多方面にわたり年間200社を超える企業においてプレゼン研修・講演、資料作成、コンサルティングなどを行う。プレゼンテーション協会代表理事、サイバー大学客員講師なども務める。