店舗指導員は「ノルマを押し付ける“トルーパー”」
同業以外の転職市場では「未経験」扱い

 その反面、OFCやSVは小売業の知識を磨く機会が、コンビニ以外の小売業と比べて少ないと指摘されている。あるセブン-イレブンのベテランオーナーは、「私の担当OFCは在庫回転率の概念すら理解していない。自分の頭で考えず、上から課されたノルマを加盟店に押し付けてくるだけ。映画『スターウォーズ』に出てくるストームトルーパー(銀河帝国軍の機動歩兵)のような存在だ」と手厳しい。上記のように在庫や廃棄リスクを加盟店に付け回す仕組みでは、在庫回転率を学ぶ動機がまず生まれないのだろう。

 そんな“トルーパー”たちが転職市場でどのように見なされるのかというと、「OFCやSVは、個人の課題解決能力がない職種とみなされ、同業以外では未経験扱いになる」(前出の転職コンサルタント)。

 なぜか。OFCやSVは厳しいノルマを課されてはいるが、これは長年にわたって築き上げられた“仕組み”の中での業務に過ぎない。例えば小売業界のコンサルタント業に転じようにも、在庫回転率を覚えることはもちろんのこと、顧客の動向や従業員の教育、販売する品目や立地など、業種によって一様ではない。

 加盟店オーナーをなだめすかし、場合によっては恫喝までしてノルマを達成してきたOFCやSVたちが、混沌とした環境から筋道を立てて解決策を見出せるノウハウを有している人材とは評価されないというのだ。

 また、他の小売店の店舗運営責任者を目指すことも難しいという。なぜなら、スーパーなどコンビニ以外の小売店の店舗では、たたき上げの店長や社員、パート、アルバイト従業員とも関係を構築し、情報を聞き出すのが店舗運営の基本。ところが、コンビニのように本部が「優越的地位」にある業種で、加盟店に商品の仕入れを要求する業務に携わっていた場合、経験を長く積んだ経験者ほど、店舗で“下”、つまりパートやアルバイト従業員との関係を構築することができないケースが多いという。

 そのため、「コンビニ業界に早めに見切りをつけて20代で異なる職種に転職する方が有利。30代、40代と経験を重ねるにつれて転職が難しくなる」(同)。

 さらにこのコンサルタントによると、SEJの本部社員は28~30代で年収600万円程度と高給だ。ファミマで400万円程度、ローソンでも400~500万円程度と、全体的に給与水準が低い小売業界では年収はむしろ高い。

 またコンビニ大手は知名度の高い大企業であるため、転職の際にいわゆる“社格”を落としたくない、給料もなるべく下げたくない、との心理が働く。従って、ビール会社で小売店向けに商品販売を行う「ラウンダー」の契約社員への転職希望者が多いという。

 コンビニ本部でも物流や商品開発を手掛けていたならば“つぶし”が利き、転職はさほど難しくないという。ただ、OFCやSV、あるいはコンビニの出店予定地を押さえる店舗開発部門を歩んだ人材は、そうはいかないのが現状のようだ。

 ファミマで希望退職が決まったある元社員は、「希望退職者の中には、お前は会社に残った方がいいんじゃないか、という人材もいる」とこぼす。ファミマは転職先のあっせんも行うとしているが、社外にポストを見つけられる人がどれほどいるのだろうか。コンビニを去った社員の処遇は決して甘くない。