タクシー業界よりもむしろ「やっかい」だったのは…!?

入山 えっ、でも、無料でやったらもうからないじゃないですか。

安永 もうからないです(笑)。それなのに、やはりここでも勝手にはできないんです。中頓別町とは、町と一緒にやっているんですが、シェアリングエコノミー協議会という会議があるんです。そこに、国土交通省の北海道運輸局の方が必ず参加するんですよ。もともと中頓別町にはタクシーが1台あるんですが、夜の8時に営業を終えてしまう。Uberは夜の12時まで動いてますし、使い勝手はいいはずなんですが、国交省は「タクシーがあるんだからタクシーを使え」と言うんです。

入山 たった1台……でも確かに1台でもあれば、「公共交通空白地帯」ではない。ルールとしてはそうですからね。

安永 1台しかないタクシーを使って、1台で回せなかったら初めてUberみたいなことを考えてやってもいい、と。つまり、Uberのロビイストチームが闘っていたのは、タクシー業界というよりも、「タクシー業界」=「国交省」=「政治家」だったといえるでしょうね。

入山 本当に闘っていた相手は川鍋さん(※川鍋一郎氏。日本交通株式会社代表。一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会会長)ではなかったんですね(笑)。

安永 ええ(笑)。実際は、タクシー業界・国交省・政治家の3枚岩が、スクラムを組んでいたんです。この3者はUberにとってエクスターナルな「やっかいな人」たちでした。

 でも実は、Uberには「内なるやっかいな人」たちもいて……。それがいちばん大変だったかもしれません。

 私がUberに入ったとき、やはり最初は業界を知るべきだと思って、タクシー業界と仲良くしたいと考えました。するとUberの側から「行ってもいいけど、後ろから刺されるよ」とか「そもそも話を聞いてくれないから行っても無駄だ」とか言ってくる人たちがいたんです。タクシー業界のほうはUberを悪魔だと思っているし、私自身としては、タクシー業界とUber本社とのブリッジになろうと思ったのに、サンドイッチになってしまっている……そういう状況でした。

入山 へえ!実は意外とUber内の人が面倒くさかったんですね。

安永 最終的にやっかいだったのは、中の人のほうでした。結局、中を変えるのがいちばん大変でしたね。

>>後編は明日3/25公開予定