テレワークの長期的影響は
「真の成果主義」と「副業」の普及
テレワークが普及することの長期的な効果として最も大きなものは、社員に対する評価が客観的に判断しやすい「成果」をベースとしたものに変化することではなかろうか。
テレワークになっても、上司が部下を評価する際に「好き嫌い」が重要な役割を果たすことは間違いなかろうし、テレワークでも器用に上司にゴマをする社員はいるだろう。
しかし、テレワークが普及すると直接顔を合わせることから生じる好悪の感情は減るだろうし、オフィスにいてストレスへの我慢を見せることだけが芸という社員の存在価値が低下する。
そして、社員の評価に納得性を持たせるためには、個々の社員の会社に対する貢献をなるべく客観的に測って示すことが重要になる。顔を突き合わせながら働いているときには、「オフィスの滞在時間」や「頑張っている感じ」が少なからず評価に影響するファクターであった。しかし、テレワークが普及し、個々の社員の時間の使い方が見えにくくなると、その社員が何をなして、どれだけ会社に貢献したかが問題になるだろう。
仕事に使う時間が少なくとも、成果を上げる社員はいい社員だ。それで何の問題もない。しかし、評価の納得性は部下と上司双方にとって重要な問題になる。
テレワークが発達すると、「評価」の基準がより明示的にルール化されて、結果的に「成果主義」の普及が進むのではないだろうか。しかも、多くの日本企業が行ってきた、義務教育時代の成績通知表のようなちまちました相対評価による「偽の成果主義」ではなく、成果により直接的に評価と報酬を連動させるような「真の成果主義」に近づいていくだろう。
加えて、テレワークの環境下では、社員本人が自分の時間をより柔軟に使うことができるようになるから、これまでよりも「副業」を手掛けることが一層簡単になるのではないかと予想できる。
テレワークの普及で副業が急に増えるということは無いかもしれないが、「テレワーク」と「副業」は相性がいいはずだ。
テレワークの普及で、(1)自分の時間をより自由に使えて、(2)成果さえ上げたらよく、(3)複数の仕事を手掛けやすくなる、という変化が起こると、働く個人が一つの会社に縛られた「正社員」である必要が減少する。
個々の社員が、より個人事業主的になり、複数の会社や個人と契約して兼業的に働くようなケースが増えてくるのではないだろうか。
テレワークの普及は、働き方の多様化の実現を少々早める方向に作用すると考えられる。テレワークの長所を粘り強く育てていきたい。