営業突破のゲートキーパーを特定する
山口 会場から質問を受ける前に、僕からいくつか聞かせてください。
リクルートの『R25』ですけど、これってもしかしたらジェネレーション・ギャップで知らない方も多いかもしれない。ここにいらっしゃるのは20-30代の方が多いから。もう刊行は20年前ぐらいでしょうか。
田端 創刊が2004年なので、15年になりますね。5年ぐらい前に紙がなくなったのかな。『R25』は電通とリクルートの合弁会社Media Shakersで展開していて、それをサイバーエージェントさんが買ってくれてメディアのブランド力をいかしてネットで再生するということで。思った以上に『R25』スピリットのエッセンスが受け継がれていて嬉しかったです。
山口 当初はもちろん紙で、駅のラックに置いてあるフリーペーパーマガジンだったんです。普通、フリーペーパーというと地元のお店や中小企業の広告が載っていますけど、『R25』には自動車最大手とか電機最大手といった、いわゆるナショナルクライアントがいっぱい広告を出していて衝撃を受けました。ナショナルクライアントに高単価でフリーペーパーに広告を出してもらうって、いったいどうやって実現したのか伺えますか。
田端 今日はリアルな話をしないと意味がないと思うので、本音でいきますね。
たとえばBtoCであれば、小売店の仕入れ担当者に商品を仕入れてもらわないと話にならないですよね。カッコよくいえば、その仕入れ担当者が「ゲートキーパー(門番)」になっている。広告の場合は、広告を出す企業=広告主よりも、実はゲートキーパーになっているのは広告代理店なんです。だから広告主の意識を変えるより、まず代理店にコミットしてもらわないといけない。
『R25』立ち上げの話はもう色々なところで書かれていますけど、もともと小林大祐さんと僕がリクルートの新規事業提案コンテスト『Ring』で準グランプリをとって、事業化の了解をもらって始まりました。リクルートは当時、広告主としてテレビCMを相当量打ったりして大きな広告主でもあったわけで、そのリクルートの若手社員がヒアリングに来たいといえば、大手広告代理店は断れないですよ。僕らはリクルートの宣伝部から連絡をいれてアポをとってもらい、電通、博報堂、東急エージェンシー、ADKなど、主要な代理店に1時間ずつ営業に回りました。だいたい悪い扱いは受けないんだけれども、『R25』を売るために協力するという言質をとられない範囲で、僕らの機嫌を損なわない程度にあしらわれるわけです。
山口 田端さんと一緒にプランを考えたその小林さんは私も友人ですが、年上の上司を相手に、場の空気を読まずに淡々と理詰めでシビアな意思決定を求めた、というような伝説に事欠かない方で、若い頃は社内でいかにも生意気だと言われてそうなタイプなんですよね(笑)。
田端 そう。二人で正論をぶつんですけども、全然相手にされない。今も覚えている一つは、雑誌の1ページあたりの広告単価で議論したこと。雑誌の広告単価というのは部数に比例して青天井で高くなるわけでもなくて、どんなに部数が多くてもせいぜい1ページ200-300万円までなんですよね。新聞みたいに全15段で1500万、数千万の単位にはいかない。だから、『R25』みたいに部数が多くて実際のリーチ率も高いものであれば、もっと広告単価は高くていいはずだ、マーケットがゆがんでいる、間違っている!ここを突けばビジネスチャンスがあるはずだ!と力説するわけですけど、「ははぁー。はー。はー。ご高説ありがとうございました」と、いなされる対応を受けるんです。
山口、会場 (笑)