特集『健康診断のホント』(全18回)の#7では、壮年男性・女性であれば心配となる前立腺がん、乳がん、子宮頸がん検診を取り上げる。エビデンスベースでは、どんな検査を受け、何に注意すべきなのか。(ダイヤモンド編集部・論説委員 小栗正嗣、医療ライター 山本尚恵)
【前立腺がん】
治療不要でも見つけるか?
個人に委ねられる判断
前立腺がんは、国が推奨するがん検診には含まれていないが、男性の罹患率が高い、男性特有のがんだ。年齢別の罹患率を見ると、60歳ごろから高齢になるにつれて顕著に高くなる。
2016年の部位別がん患者数では、大腸がんを僅差で上回り、胃がんに続く2位となった。
この前立腺がんも早期では自覚症状がほとんどないが、症状が進むとリンパや骨などに転移し、排尿障害や頻尿などの症状が見られることもある。ただし、進行はかなりゆっくりで、命に関わることは少ないとされる。
前立腺がんのリスクを調べるには、PSA検査が有効だ。これは血液でがんのリスクを調べる「腫瘍マーカー検査」の一種で、前立腺に異常があると大量に作られるタンパク質、PSAの値を見る。
この値は、前立腺炎や前立腺肥大症など、前立腺がん以外の病気でも上昇する。値が高いからといって、がんであるとは限らないわけだが、「PSA検査の感度は80~90%ほどとされ、腫瘍マーカーとしては例外的に高い」(中山富雄・国立がん研究センター 社会と健康研究センター健診研究部長)ことが知られる。
そこで問題になってくるのが過剰診断だ。前述の通り、前立腺がんは進行が非常にゆっくりで、見つかったとしても命に関わらないことが多い。
検査で救われた命がある一方で、別の原因で亡くなった人を解剖すると、そこで初めて「前立腺がんだった」と分かることがままあるといわれる。
こうしたおとなしいがんでも見つけるべきか、発見したがんはどうすればいいのか。