マネジメントの本質とは
「望ましい状態をなんとか実現すること」
では、今の危機的状況をどうマネジメントしていくべきなのか。そのあり方を考える前に、そもそも「マネジメント」とは何か、を考えておくべきだと思います。
日本では、一般的にマネジメントとは「経営」と「管理」とされており、企業経営のためのものと誤解されていますが、これはマネジメントの本質を捉えられていないことに起因します。
本質を捉えると、マネジメントの本質とは「望ましい状態をなんとか実現すること」と置くことができます。manage to~は「なんとかして~する」と訳されます。つまり、一言で言えば、「なんとかすること」がマネジメントなのです。
このようにマネジメントの本質を捉えることによって、企業経営のみならず、セルフマネジメント、ライフマネジメント(人生経営ではおかしい)、チームマネジメント、リスクマネジメント、そしてクライシスマネジメントといったあらゆる事象をマネジメントの対象とすることが可能になります。
今、日本中の組織は大きな意思決定を迫られています。これは政府や地方行政や大企業だけではありません。コロナ災害は、国が緊急事態宣言を発令したら止まるというものではありません。コロナ災害を食い止められるかどうかは、各家庭の、各人の意思決定と行動にかかっているのです。
新型コロナ対策の危機の本質は
「手遅れになる構造」にある
刻一刻と状況が変わる有事の際の意思決定には大原則としてスピードが求められます。
クライシスマネジメントの対象は「危機的状態」です。危機における意思決定の停滞は、致命傷になります。
いまだに一部で「騒ぎすぎ」「自粛の必要はない」といった声も聞かれますが、新型コロナ対策の危機の本質は「手遅れになる構造」――Too Late Mechanism(TLM)――にあることを理解しなければなりません。つまり、感染者が増加して医療崩壊が起こりかけた段階で対処をしようとしていてはもう遅い。ほかの疾患で助かる人も助からなくなる可能性が出てきてしまうのです。
まだ目の前に津波が見えないからといって高台に避難しなければ、津波が見えたときには手遅れになるのと同じように、新型コロナウイルスに対しては「今」立ち現れている現象(感染判明者数)をもって意思決定をしていては、手遅れになってしまう構造になっているのです。