キャッシュの創出と有効活用が鍵となる「冬の時代」

朝倉:次に、「C.資産の最適分配」について考えてみましょう。冬の時代においては、特にキャッシュの希少性が高まるため、資産をいかに最適配分するかがより切迫した経営課題になります。

既存事業に投資するのか、新規事業に投資するのか、または新たなアセットの投資・買収に活用するのか、それとも株主や債権者へ還元するのか。会社は、これらの手段を慎重に比較検討する必要があります。

極端な例ですが、資金調達環境が厳しくなり、既存事業からのキャッシュ創出もままならないような状況下で「今あるキャッシュのうちの7〜8割を、まだ芽の出ていない新規事業に投資します」と宣言すれば、ステークホルダーから「待った」をかけられても仕方ありません。

新しく何かにチャレンジするにしても、どの程度までのリスクであれば負うことができるのか、会社の舵取りにあたって自分たちの投資余力やリスク許容度を見極めるセンスが、冬の時代にはより重要になります。

村上:そうですね。「ベンチャー投資バブル」とも言われるような「夏の時代」が過ぎて、冬の時代に入れば、限られたリソースを分配しながら会社を運営していかなくてはなりません。その際には、意思決定の精度がより重要になります。

まず、投資する対象を峻別しなければなりません。冬の時代にはマーケット自体が縮小するため、投資に対して期待されるリターンが夏の時代よりも下がることは意識しておかなければならないでしょう。

また、資金調達の難易度も上がりますから、資金調達と実行推進のサイクルを単発で捉えるのではなく、手元資金をベースに、長期的に試行錯誤を重ねられるような体制を準備しなければなりません。これらのことから、資金も含めたリソースをどこに配分し、どこを絞るのかといった優先順位付けがより重要になると思います。

小林:経営者が精度高く優先順位を付けられているかどうかを、投資家側も注視するでしょうね。

朝倉:冬の時代、マーケットの縮小は新規事業に限らず、既存事業でも当然起こることです。「A.外部からの資金調達」が困難になる中、いかにして既存事業からの「B.資金の創出」を維持できるかもまた、重要なポイントになるでしょう。

村上:そうですね。マーケットが好調なときは、既存事業から十分にキャッシュが創出できていなくても、投資家の資本・資産に余裕があるため、「A.外部からの資金調達」と「D.ステークホルダー・コミュニケーション」の難易度が比較的低い。多少無理のある説明でも、資金調達ができるかもしれない。

一方で、冬の時代に移ると途端にリソースが限られますから、既存事業からしっかりと資金を創出できているかどうかの重要性が高まります。これが、スタートアップ冬の時代の最大の特徴かもしれません。

朝倉:そう考えると、固定費の抑制や資金投下の効率性の精査といった、「守り」の視点も重要になるということでしょうね。