テレワーク拡大を阻む
「心の足かせ」とは?
緊急事態宣言が全国に広がった今、特に平日の感染拡大を防ぐには、より広くテレワークを推進するほかない。では、どうすればテレワーク実施がさらに拡大できるのか。
テレワーク拡大を阻む要因を探るため、まずは「テレワークを実施できていない理由」を見てみよう。調査結果では、「テレワークで行える業務ではない」が47.3%、「テレワーク制度が整備されていない」が38.9%となった。これだけ見れば、テレワーク実施には業務や制度上の現実的なハードルが高いことが要因のように見えるし、現在世間でも多く議論されている。しかし、もう少しデータを読み解けば、違う見方ができる。
結論を端的に言えば、現段階におけるテレワーク拡大の最も高いハードルは、人々の「危機感の濃淡」にある。
先ほどの都道府県別のテレワーク実施率と、その当時(4月10日)におけるその都道府県の新型コロナウイルス感染者数の相関係数は0.79と、かなり強い相関関係にある。つまり、「テレワークが実施できない」という現実的制約よりも、まだ周囲に感染者が少なく、「大丈夫だろう」と感じている企業・従業員が多くいることのほうが、テレワーク実施率に影響しているということだ。
ほとんどの企業活動、従業員の業務は、「他者」との相互行為を含んでいる。多くの仕事は、同僚、上司などの職場関係や、クライアントや同業他社、取引先などと関係しながら進んでいく。つまり、以下の図の左で示したような単純なモデルのように、「危機感の強い企業・個人から徐々にテレワークしていく」ということは、現実的には難しい。実際には図の右のように、周囲の関係する他者との相互作用によって、危機感が強い人がいるとしても、理想よりもテレワークを実施できない。つまり、「足かせ」をはめられているような状況になる。
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調査においても多数を占めた「テレワークではできない業務がある」の「できない」の中には、例えばクライアント先の設定した納期に間に合わないだとか、他社が電子取引に対応していないだとか、会社全体の業務指示だとか、個人や個社にとっては「どうしようもない」ようにみえる制約が多数含まれているだろう。「同僚が出ているから」という同調圧力に打ち勝てない個人などもたくさんいるはずだ。