コロナ禍で介護負担が増す可能性も
テレワーク後の「個人の問題」にきめ細かな目を

 もう一つ、忘れてはならない問題がある。それは、「介護」の問題だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、デイサービスやショートステイの施設が使えなくなったり、感染を気にして利用を控えたりする介護者が増えている。緊急事態宣言の全国拡大によって、通所型の施設を中心に全国で少なくとも883の介護サービス事業所が休業していると報道されている(NHK報道、4月21日現在)。

 問題はこうしたとき、在宅勤務をしている人々が、「自宅にいるから自分で介護できてしまう」と考えることだ。要介護者を抱える人が自分で手を動かす範囲を広げれば、結果的に介護負担が高まってしまいがちだ。介護は終わりがなかなか見えない活動だ。他人の手を借りずに家庭で背負い始めてしまえば、虐待や離職などの悲劇的な結果を生むことにつながりかねない。

 そして、平成29年就業構造基本調査によれば、介護離職者数は、男性は2万4000人、女性は7万5000人となっており、女性が約8割を占める。近年は大企業を中心に、男性の介護離職が増えたことで社会問題化してきたが、そもそも介護による就労への影響も圧倒的に「女性」に偏り続けていることは忘れてはならない。

 結論をまとめよう。先ほどの育児の偏りに加えて、介護の偏りも女性側に重くのしかかってくるとするならば、現在のテレワーク拡大による女性活躍への影響については、決して楽観的な見通しはできず、むしろマイナスに作用する可能性すらある。「緊急事態」下で行われているテレワークにおいても、家事や育児、介護の負担が女性に偏れば、今後テレワークがさらに社会に浸透したとしても、女性の負荷が高い構造は変わらず、中長期的に続いてしまうかもしれない。社会としても、注視が必要だ。

 また、企業としては仕事との両立のために、従業員全体にテレワークを認めるという「面」でのケアだけではなく、「点」のケア、つまり個別相談や密な連絡など、負荷に偏りがある女性などの個人に寄り添ったサポートを行うことが必要だ。「テレワークできるようにしたから大丈夫」ではなく、「テレワークだからこそ起きてくる問題」によりきめ細やかな目を向けることが求められている。