困っている従業員は
労働局に相談できる
感染防止策を怠っている会社の従業員は、各地の労働局に相談することも一つの対応策といえる。東京労働局などでは、行政運営方針に「新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応」を掲げ、特別労働相談窓口において、引き続き、労働者および事業主からの休業や助成金等に関する相談に迅速かつ円滑に対応するとしている。
安全配慮義務違反が明らかであれば、裁判所に損害賠償請求(損害が発生している場合だが)を求める訴訟も考えられる。安全対策も大してなされない社屋で業務に従事して、新型コロナウイルスに感染した場合、安全配慮義務に違反すると判断される可能性は、当然ながらありうるのだ。それほど事態は深刻であると考えるのが相当である。
しかし、である。現在においても会社によっては、新型コロナウイルス感染問題に対する感度はまちまちであり、Yahoo!ニュース「みんなの意見」で行った『緊急事態宣言、あなたの会社はどう対応?』(4月6日~16日実施)というアンケートでは、「特に対応なし」が62.7%。「テレワークを推奨」が15.5%、「テレワークと時差出勤の両方を推奨」が11.1%となっている。(調査結果はこちら)
調査対象や調査の方法が異なるが、厚生労働省とLINEが行った調査(2020年4月12~13日調査)では、3密(密閉・密接・密集)の状況を避けている人は50.88%であり、半月前から約22ポイント増えたものの、半数にとどまっている。
そして、医療従事者でもなく、社会機能維持に関わる会社でもない一般の事業者において、今もなお、会社の業務継続が感染拡大防止より優先であるとして、大した感染防止対策を講じることなく従前のレベルで出勤を求めて業務を継続したり、「在宅での勤務は作業効率が悪いので、在宅勤務をうるさく指導されるのは迷惑だ」という声も聞こえてくる。
しかし、現在の状況下で本当にそのような価値判断が正当といえるのであろうか。会社トップや責任者は、相応の経費を投入しても従業員の感染防止対策をしっかりと講じる方が、結果的には会社の利益になる。さらには、感染拡大を抑制して社会機能を維持することが、実は巡り巡って会社を守ることである、という基本的なスキームを理解し、実践してもらえないだろうか。まん延防止を実現して、可及的速やかに「かつての日常」を取り戻すことが、会社の価値を維持することになるということを、改めて十分に認識をしていただきたい。