『週刊ダイヤモンド』5月23日号の第1特集は「コロナ恐慌 収入激減&定年危機 徹底見直し術」です。コロナ禍の強烈な逆風が働く世代の家計をむしばみ、多くの人のマネープランが一変を余儀なくされています。足元で収入減への不安が渦巻いていますが、不況が長引くほど潜在的に高まり続けるのは、老後生活が危ぶまれる“定年危機”の到来です。

夏のボーナス激減だけでなく
「大失業時代」が危惧される

 新型コロナウイルスの影響で、世界中の経済環境が激変している。日本も当然、例外ではない。企業の業績悪化が響き、目先では今夏のボーナスが激減する人も多いはずだ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングによれば、今夏の民間企業(事業所規模5人以上)のボーナス支給額は、昨夏に比べ7.6%減と、リーマンショック以来の大幅な落ち込みが予想されている。企業規模や業態によっては半減したり、全く出なかったりする人も多いはずだ。

 ボーナスどころか、足元では雇用危機の懸念すら高まっている。米国では既に、4月分の雇用統計で失業率が戦後最悪の14.7%まで悪化した。

 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算によれば、日本でも失業者が265万人、戦後最悪の失業率6%台という「大失業時代」の到来が危惧されている。

 さらに、政府が対策を打っているとはいえ、中小企業などで資金繰り破綻が連鎖的に広がる懸念も根強い。民間調査会社によれば、既に11日までに133件の「コロナ破綻」が発生した。倒産に至らずとも、今後、業績悪化に伴うリストラの増加は不可避の情勢だ。

 このように不安材料が山積しているわけだが、収入減が家計をむしばんだ先、真に危惧されるのは、多くの人が後々の老後生活に支障を来す「定年危機」に直面しかねないことにある。

コロナ前からくすぶっていた
「定年崩壊」の火種

 実はあなたの人生設計を狂わすような火種はコロナ前からあった。

 例えば、好業績にもかかわらず、余力のあるうちに人員整理を行おうと、誰もが知る大企業であったとしても黒字リストラが当たり前のように行われ始めていた。中には30代が対象の早期退職募集も出ていたほどだ。

 さらに、今年3月には、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が成立。既に65歳まで再雇用で働く人は増加中だが、もはや「70歳まで働く」のが当たり前の時代は目の前だ。

 つまり、大企業に入りさえすれば安泰であるとか、60歳で退職したら悠々自適のリタイア生活を送るという、終身雇用を前提とした従来型の雇用システムは、既に崩壊した状態にあったのだ。

 そんな状況にもかかわらず、金融庁の審議会での議論を発端として約1年前、公的年金だけでは夫婦の老後生活には約2000万円足りないという「老後2000万円問題」が話題になったのは記憶に新しいだろう。

「老後2000万円問題」を
3人に2人が不安視

 コロナの影響が本格化する過程の時期(3月下旬~4月上旬)にダイヤモンド編集部がアンケート(インターネット調査、回答総数706人)を行ったところ、3分の2の人が「老後2000万円問題」に不安を持つことが分かった。

 もともと老後不安が高まっていた中で日本に飛来したコロナ禍。今は目先の収入や雇用の問題に目が行きがちだが、コロナは定年後の老後生活に大格差を生む元凶となる可能性が高い。目前の問題ばかりに気を取られていると、後々に大きなツケを回しかねないのだ。

 前述のアンケートでは老後不安を和らげるための方策として、半数以上の人が「長く働き続ける」を選択。さらに、「資産運用を行う」(30.9%)、「家計を見直す」(11.9%)と続いた。

 年金支給が後ろ倒しにされ、コロナで企業業績にも陰りが出る中で、この選択は正しい。しかし、やり方を間違えては元も子もない。

 現役世代も定年が見えている世代も、正しい対策をなるべく前倒しで進めることが重要なのだ。そこで本特集では、それぞれの回答内容を各パートに対応させる形で、これら3本柱について徹底的に見直せるような内容としている。

 備えあれば憂いなし。都心を中心に緊急事態宣言が5月末まで続く予定の中、以前より人生の先行きをじっくり検討する時間ができたという人も少なくないだろう。〝老後破綻〟を来さないように、「定年大格差時代」を生き抜くサバイバル術を学び、できるだけ早く実行に移してほしい。

「長く働く」「資産運用」「家計見直し」
3つの視点から抜本的な対策を

 『週刊ダイヤモンド』5月23日号の第1特集は「コロナ恐慌 収入激減&定年危機 徹底見直し術」です。緊急事態宣言が解除されても、治療薬が開発されたとしても、世界経済に大打撃を与え続けているコロナ恐慌がこの先、長く家計をむしばみ続けることが懸念されます。

 そもそもコロナ以前から、会社が定年まで面倒を見てくれる時代は過ぎ去っていました。業績悪化によるリストラの恐怖が迫る一方、「70歳定年時代」が目前の今、中高年はキャリアの築き方を再考する必要に迫られています。

 それに加えて、「老後2000万円」問題への不安を和らげるためには、公的年金だけでは老後生活が賄えないことから、資産運用を行って「じぶん年金」を蓄えておくことが求められます。

 さらに現在の給料を維持することすら難しくなってきた今、「家計の見直し」も行っておかなければ後々にツケを回すことになりかねません。その際、鍵になるのは「固定費」の扱い方です。

 最終的に、自身や家庭の懐は、自ら守るしかありません。そのためには、できる備えをなるべく早く行っておくことが大切。本特集では、「働き方」「運用」「家計」の3つの柱それぞれにパートを立て、“老後破綻”に陥らないよう生活設計を見直すためのノウハウを徹底解説しました。

(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)