医療物資の手作りを
美談にするな

 一方で世界保健機関(WHO)は13日、新型コロナウイルスは「今後も消滅しない可能性がある」として、コロナとの戦いが長期化する見通しを示した。世界各国の状況からも、感染拡大の第2波、第3波はいずれやってくるとの見方が大勢だ。

 医療崩壊を防ぐために、医療機関の受け皿となる――。訪問看護のこうした役割は今後増すことはあってもなくなることはない、とAさんは確信している。

「今後は、退院患者のほかに、PCR検査で陽性になったけど軽症といった人も受け入れなければならないでしょう。そのためにも訪問看護は頑張らないといけない。でも今のままの装備では怖い。私も毎日のように気持ちが揺れています」

 Aさんに言わせると、医療機関では室内の換気もできているし、「不潔ゾーン」と「清潔ゾーン」の仕切りも厳密だという。それに比べると、訪問看護の現状はどうしても見劣りしてしまう。毎日、複数の利用者の自宅を訪問することによる感染拡大リスクも考えなければならない。訪問看護ステーションは小規模なところも多いので、スタッフや利用者から1人でも感染者が出ると、風評被害によって閉鎖に追い込まれる懸念もあるという。

 1人の看護師が心身ともに限界まで働いたり、スタッフたちが医療物資を手作りしたりしなければならない現状を、Aさんは美談だとも、素晴らしいことだとも思っていない。だからこそ、こう訴えたい。

「医療機関の受け皿である訪問看護が機能しなくなったら、あっという間に医療崩壊が起きます。訪問看護師たちも、病院のスタッフと同じく最前線でコロナと向き合っていることを知ってほしい」

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