医療用マスクすら手に入らない
訪問看護師は多数いる

 Aさんのオーバーワーク状態は、訪問看護が置かれた危うい状況を象徴している。物資不足による“竹やり装備”では、対応できる人材は限られる。高まるニーズに応えるには、一部の看護師に過重な負担を強いるしかない。コロナ禍において、最も必要とされる社会資源の一つにもかかわらず、物資も人材もまったくもって行き届いていないのだ。

 Aさんは「うちは母体が医療法人なので、サージカルマスクやN95マスクなどの医療用マスクが辛うじて手に入るだけまだましです。普通のマスクしかない中で、私と同じような働き方をしている訪問看護師は地域に何人もいます」と言う。

 Aさんによると、この間、訪問看護の現場の対応は二つに分かれてきた。Aさんが勤める訪問看護ステーションのように、医療機関からの要請に積極的に協力しているところと、「スタッフやほかの利用者への感染の恐れがある」などの理由で受け入れを控えているところがあると指摘する。

 受け入れに消極的な施設があるので、一部の施設への負担がさらに増すという構造はあるものの、Aさんは「十分な感染対策ができているかも分からない中で、ちゅうちょする気持ちはよく理解できる」という。

 Aさんの訪問看護ステーションでも、コロナウイルスの陽性患者のもとへの訪問はまだ経験していない。つい先日、医療機関から入院治療後、症状が治まったという患者の受け入れを打診されたが、返事を保留しているという。報道などでは検査で陰性となったのに、再び陽性になるという事例がいくつも報告されている。スタッフから「この患者を受け入れたら、(家族への感染リスクが心配で)家に帰れない」という声が上がったためだ。

 Aさんは「コロナ陽性者を本格的に受け入れているところは、全国的にもまだ少ないのではないか」という。