つい先日、とある大手企業の新入社員研修を行う機会がありました。今年はオンライン研修ということで、よりいっそうこの点を重視し、大げさに「うなずく」練習をしてもらいました。プログラムの最後で各自が軽いプレゼンテーションをするのですが、その際、他のメンバー全員が大きくうなずく様子が画面越しに映っていました。それを見たことで発表者も、「オンラインだったけどストレスなく話せた」「話が通じていると実感できた」等と述べており、全体としてポジティブな反応が多かったです。

 聞き手がうなずくことは、話し手の話しやすさに大きく影響します。オンラインであればなおさらです。慣れないことばかりの新入社員の皆さんも、うなずくことのパワーを実感し、それが、お互いを労わるというコミュニケーションの形の第一歩だと理解してくれたようです。

 これは低文脈世界での、新しい「気遣い」と言ってもいいでしょう。うなずき方を見ただけで、コミュニケーション力が推し量れると言っても過言ではありません。

低文脈、グローバル・モードにシフトするなら、今がチャンス

 このように、リモートワークがスタンダード化するにつれて、日本ローカルの高文脈コミュニケーションから脱却し、低文脈に切り替えることが必要となってきます。そして今後は、日本のビジネス環境そのものが、さらにグローバル標準に近づいていくことでしょう。

 すでに、「定時勤務」や「働く姿勢」に影響が出てきています。働いている姿が見えない分、「頑張っているか」「頑張っているように見えるか」にさほど意味はなくなり、純然たる「アウトプット」で評価されるべき時代になるでしょう。「無駄な時間は使いたくない」という共通の思いの下で、だらだらした会議、意味のない会議、わざわざ集まる必要のない会議はカットされ、集まる意義がある、あるいは、きちんとアウトプットを出す会議だけが残るようになります。

 この新しいグローバル・モードにおいては、求められる仕事のスキルはどう変わっていくでしょうか。次回から、本書の目次に沿って具体的に紹介していきましょう。

なぜ日本のビジネスパーソンはオンライン会議が苦手なのか
児玉教仁(こだま・のりひと)
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。