株主総会直前に956円を付けていた三陽の株価は、会社側が勝ったにもかかわらず、総会終了後にずるずると下がり、26日の終値は897円まで落ち込んだ。

 とはいえ、大江体制は確立した。「中山氏を残したのは、イエスマンで使いやすいからだろう」と三陽の幹部は苦笑する。

 大江氏入社と前後し、常務執行役員をはじめ露骨な降格人事が行われ、一部の反対分子は粛清された。もはや大江氏に盾突く人間はおらず、急速なリストラと構造改革が粛々と実行されることになる。

 1年で百貨店からの150店舗の撤退、赤字店舗の撤退とそれに伴う人員整理など、出血を止める徹底的な規模縮小策だ。

 事業拡大の失敗による赤字の連鎖、百貨店依存と過剰在庫、繰り返される早期退職の募集、株主提案による混乱――。この姿は、1990年代から長らく経営難であり、5月15日に経営破綻したレナウンの姿と重なる。「今後の三陽の生きる道がどこにあるかというと、(中略)ハイエンド、アッパーミドルという方向性」と大江氏は強調した。

 大江氏の古巣のゴールドウインで現在大人気のブランド「ザ・ノース・フェイス」の販売開始は78年。構造改革の果てに描く未来は、時間をかけた高価格帯のブランドづくりだろう。

 しかし、そこにたどり着くまでに待ち構えるのは体力との闘いだ。新型コロナという爆弾を抱え、新生・三陽は前途多難なスタートを切ることになる。