ここ数年、もっとも急速にかつ多様に進化したデジタル端末、それは紛れもなく携帯電話だろう。とくに昨今では、通信速度の高速化が進む中、写真・動画などのマルチメディア機能の進化が著しい。カメラ機能についても、もはや300万画素は当たり前。カメラを持ち歩かなくても、「ちゃんとした」写真を撮ることができる。
さて、ここで問題は、「撮った後」。もちろん、「写メ」として、友人・知人に送るというようなこともあるとは思うが、メールを送るように気軽に送れているかというと、そうでもないというのが実情ではないだろうか。
携帯メールが、デコメール、絵文字というような独自の表現機能をもっているのに対し、写真や動画は、そのまま添付するだけというのが通常。携帯電話をコミュニケーションツールとしてとらえた場合、「写真・動画によるコミュニケーション」は、インフラの進化に見合うだけの普及と進化を遂げているかというと、疑問が残る。見方を変えれば、この分野にはポテンシャルがあるということであり、そのあたりに着目したサービスが、続々、発表されている。
「Photomemo」のサイト。トライアル期間中のユーザーの意見を反映し、正式サービスとして公開予定。 |
最初に紹介するのは、NTTレゾナントが1月末に試験公開した「Photomemo」。携帯電話で撮影した写真をユーザー同士で共有するためのPCサイトだ。撮影した写真を携帯メールに添付、専用アドレスに送信するだけでPCサイトにアップできる。コメントやタグも、メール本文に書けばそのまま反映されるという仕組みだ。
デジカメで撮影した写真を共有するサイトは数多いが、同サイトは、携帯に写真を保存したまま「投稿」でき、そのライブ感とともに、あらかじめ登録しておいた友達や家族と、写真を共有できる点がウリだ。
次に紹介するのが、KDDIによる「MYスライドビデオ」。こちらは、動画を加工するためのツールだ。「LISMO Video」に対応するau携帯電話のカメラで撮影した写真を、簡単にスライドビデオ(オリジナル写真付きビデオ)にし、ダウンロードできる。音楽や映像が入ったテンプレートから好みのものを選び、撮影した写真をメールで送るだけでスライドビデオを作成することが可能で、保存先のURLを送信することで友人や家族との共有もできる。提供開始は、3月下旬予定。
この二つのサービスの共通点は、携帯電話で手軽に撮影可能となった写真や動画に何らかの価値を与えることだ。こういった付加価値の提供が通信キャリアや機器開発側にとっては、差別化を担う上で重要な要素となる。
「差別化」という意味で、一歩先んじた携帯メールを振り返ってみると、デコメールにしても、絵文字にしても、作り手側ではなく、ユーザー側が「開発」したものだ。そうしたユーザーのニーズに、作り手側が乗っかったことにより、普及と進化が進んだとも言える。おそらく、「Photomemo」にしても「Myスライドビデオ」にしても、サービスの進化に対してユーザーが握っている決定権はきわめて大きいだろう。
その進化を見守るのもよし、自らが積極的に活用してみるもよし。ちなみに、「Photomemo」は、試用期間の間のユーザーの声によって改良を加えていくという。作り手側を動かす醍醐味のようなものも味わえるかもしれない。
(梅村 千恵)