【これから】を見据えた悩みはさらに2つに分かれます。1点目は、これまでも重要なイシューであったものの、思うような進捗が見られなかったものです。例えば、「目標設定や評価」「自律と協働の風土の形成」などです。

 2点目は、テレワークが提起した新たな企業と人の関係性です。テレビ会議ツールがもたらした「等分」の考え方や、社員起点・未来の社員起点での人事施策の再考などがこれにあたります。

 こちらは、「本当にそんな変化が訪れるのか?」「今は非常時だが、平時になれば、揺り戻すのではないか?」「企業や人はその変化に対応する必要はないのでは?」という、主にテレワークに懐疑的な見方をしている経営陣や企業の上層部がいる企業ほど、悩みが深まっているように感じます。

 しかし、テレワークを無理やりにでも体験したことで、テレワークの恒常的な導入やそれに伴う人事制度の変更は、不可逆的になったと考えられます。

 これまでの時代は、労働組合との関係もあり「一斉」「一律」といった人事制度が基本になっていました。対してこれからは「一人ひとりに寄り添った」人事制度こそが、望ましい時代に移っていくと考えられます。これらから目をそらしては、新しい時代に合った働き方は実現できません。

 このように、テレワークに関する悩みは【今・目下】と【これから】のものに分けて理解し、それぞれに対処していくことが大切です。

 そこで次回以降は、私たちのもとに寄せられるテレワーク・働き方関連のお悩みの中から、多くの方に共通するものについて、【今・目下】のものと【これから】のものに分けて、具体的にお答えしていきます。

【今・目下の悩み】の質問例
例:テレワークで部下がさぼっていないか心配。どう部下をマネジメントすればいいか。
例:雑談などもなくなり、チーム内の一体感がなくなっている気がします。どうすればテレワーク中でもチームワークを保てるか。
例:上司や先輩がそばにいないので、ちょっとした相談がしづらくなった。
例:テレワークをしていると仕事をさぼっていると思われないか不安だ。

【これからの悩み】の質問例
例:テレワークによってもたらされた変化によって、人事制度等しくみや考え方を変える必要のあることとはなにか。
例:今回を機に、テレワークを働き方として根付かせたいが、経営層はあくまで緊急事態への時限的対応と考えており、テレワークの正式導入には懐疑的である。どうしたら正式な導入が図れるか。
例:アフターコロナの組織人事といったことが議論されているが、日本の伝統的企業の人事や仕事の進め方は、思ったよりも大きな変化を遂げていないような気がする。今回も揺り戻しが起きるのではないか。