【手順3】優先順位を決める
メイン顧客を死守、プロジェクトを白紙に

 次にやるべきは、優先順位を決めることである。中堅企業が大企業と大きく違うのは、1つか2つの顧客が全体の売り上げに占める割合、1つか2つの商品の全体の売り上げに占める割合が高いことだ。メインの顧客から切られたら、その商品が作れなくなったら、終わりである。

 顧客企業の調達量が半分になり、調達先が3社から1社になるのであれば、その1社に残らなくてはならない。浪花節だけれども、社長自らが何度でも先方に連絡して、先方の要求を聞いて商品の改良やコストダウンを約束し、その1社に残らなくてはならない。メインの商品の部品が調達できなくなりそうであれば、可能性のありそうな会社にかたっぱしから連絡をとって、どうにか作るしかない。

 メインの顧客、メインの商品を何が何でも守る。切られてもいいところ、作れなくてもよい商品の対応は後回しでよい。もともと薄利か赤字になっている商品が多いのだ。粗利があまり出ていない取引はやめる。そのための良い機会と考えよう。

 そして、全プロジェクトの白紙化を行う。過去の判断ではなく、いまこの状況で、このビジネスを推進しますか?と問いかける。そして、ダメなものはすっぱりとやめるのだ。問題はサンクコスト(埋没費用)といわれるものである。ここでやめると、掛けてきたお金とエネルギーのすべてが無駄になるので、なかなかやめられない。しかし、コロナによって、事業環境そのものが大きく変わったのである。

 冷静に考えて、いまの段階で成功が見込めないものは、スパッとやめる。掛けたお金はあきらめるしかないのである。だらだらと赤字を垂れ流すよりも100倍良い。

【手順4】雇用問題に着手
希望退職を募ることも

 次に避けて通れないのが雇用問題である。状況が好転し、すぐに人手不足になる可能性もないわけではない。しかし、シナリオ分析の結果、すべての雇用を維持し続けられないのであれば、希望退職を募らざるを得ないかもしれない。中堅企業の場合は、社員全員の顔が見えるだけに、希望退職を募るのは厳しく悲しい。ただ、お金が借りられる状態であれば、退職金もしっかり出せる。

 ここまで、4つの手順を説明してきた。何よりも重要なことは上記のようなことを実行することである。いろいろ迷いも出るし、自信を持てないことも多い。ただ、迷っているだけでは何も好転しない。多少の間違いや失敗は必ずある。そしてできるだけ、谷を短く、早く空気を前向きに変える。安全なところまで引いて盛り返す。ここを生き残れれば強くなれるのだ。そして、新たな時代に対応できる事業や商品を伸ばして、事業ポートフォリオの変換を図る。ピンチはチャンスと捉え、未来に希望を見いだしたい。

 このように、不確実な時代のクライシスマネジメントにおいては、経営者は常に緊張を強いられるから、強い意志を持ち続けなければいけない。Never Never Never Surrender! 決してあきらめない姿勢こそが自らと会社を救う。いろいろつらいことも多いけれども、勇気を持ってやりきることが重要だ。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進)