ベンフォードの法則が成り立つケース

 また、特に指数関数的な変化はしなくても、ベンフォードの法則がよくあてはまるケースがある。それは、会員番号のように1から順に番号が付けられるケースである(「0001」のように、0から始まるナンバリングは考えない)。

 たとえば、会員数5000人のファンクラブがあるとする。すると、先頭の数字が5、6、7、8、9の会員番号は、先頭の数字が1、2、3、4の数字に比べて極端に少なくなり、会員数が1000人~1万人のキリのいい数のときに、先頭の数字別に個数をカウントしても、先頭の数字が1のものは、すべての会員数で最大個数になる。

 会員番号のように順々に番号が与えられるとき以外でも、人口や川の長さのようにある範囲の中でほぼ一様に数字が散らばっていることが期待されるケースでは同様の現象が起き、やはりベンフォードの法則がよくあてはまる。

 ただし、電話番号のように別のルールによって決められる数の並びや、センター試験の得点のように正規分布(統計における最も重要な分布。左右対称の釣り鐘型になる)に支配されるデータは、ベンフォードの法則に従わない。

 また、値の範囲に制限のないランダムな数の集合も、ベンフォードの法則の適用外である。しかし、新聞の記事に登場する数字のように、ベンフォードの法則に従わないいくつかの分布からランダムに集めたデータは、再びベンフォードの法則に従うことが知られている。

 以上より、特に良い精度でベンフォードの法則が成り立つのは、次のケースである。

・指数関数的に増加する数字の集まり
・ある範囲の中で順々に与えられた数字の集まり
・ある範囲の中で一様に分布することが期待される数字の集まり
・いくつかの分布から無作為に選ばれた数字の集まり

 ベンフォードの法則を数学的に証明するには、スケール不変という性質を拠り所にするのが一般的である。スケール不変とは、単位系を変えても同じ性質が成立することを意味する。

 もし、本当にベンフォードの法則が真理を表しているなら、(ベンフォードの法則に従う例として有名な)川や湖の面積の値を別の測定単位系にしても、同じ結果になるはずである。神様はヤード法よりもメートル法の方を好むなどということは考えられない。

 ということは、最初の数字について普遍的な法則があるのなら、それはスケール不変でなければならない。スケール不変の性質を微分方程式で表し、これを解けば、数学的にベンフォードの法則を導くことができるのだが、本原稿では割愛させていただく。