天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』が6月4日に発刊。発売4日で1万部の大増刷となっている。
教育系YouTuberヨビノリたくみ氏から「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。連載のバックナンバーはこちらから。
無理数は永遠に続く
円周率はいわゆる無理数である。無理数というのは(分子も分母も整数の)分数で表すことができない。これは小数点以下に規則性のない数が永遠に続くことを意味する。
逆に(分子も分母も整数の)分数で表すことができる数(有理数という)は、小数点以下の数字が有限個で終わるか、永遠に続く場合はその並びに規則性がある。円周率は無理数であるから、数の並びに終わりはない。「最後の数字」は存在しないし規則性もないのだから答えることはできない。まさに「?」なのである。
ところで、円周率が無理数であることは、紀元前4世紀のアリストテレスは既に予想していたようであるが、ドイツのヨハン・ハインリヒ・ランベルト(1728~1777)や、フランスのアドリアン=マリ・ルジャンドル(1752~1833)によって実際に証明されたのは18世紀後半のことだった。
アルキメデス的な正多角形を用いた円周率の「見積もり」は、無限に続くものを有限のもので「近似」しているに過ぎない。おのずと限界が見えてくる。
そこで、代数学の父の一人でもあるフランソワ・ヴィエト(1540~1603)は、無限に続く数の掛け算で円周率を表すことを考えだした。
ヴィエト以降、円周率の計算は、このような無限に続く数式で計算する方法へと大きく舵をきることになる。