新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり 』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
「1つの答え」のみを出させる教育の弊害
日本の子どもは、年齢が上がるにつれて自尊感情が低下し、高校生になると非常に低くなります。
その原因のひとつは「受験で多く見られるような『閉じた問い(解答範囲が制限された問い)』とそれに基づく評価が挙げられるのではないか」と、小児科医でお茶の水女子大学名誉教授の榊原洋一氏は指摘します。「たったひとつの正しい解を追い求める行為をくりかえしていると、子どもは自分のできないことにばかり目が向くようになる」といいます。
シドニー大学の神経科学者、アラン・スナイダー教授の研究では、世界中のスポーツ選手、政治家などを調べた結果、どの分野においてもトップに立つ人は、多面的な方法で物事を見ようとしていることがわかりました。
子どもたちを「正解は1つだ」というとらわれから解放し、柔軟に考える自由を示してあげる必要があります。では、子どもに柔軟に考えられる多様な視点を持たせてあげるために、親には何ができるでしょうか?
【その1】「安心して発言できる場所」をつくる
家庭を子どもにとって安心できる場所にします。安心とは、自分の意見を躊躇なく言える状態のことです。
子どもが「間違うのではないか」「ばかにされるのではないか」「否定されるのではないか」と感じることなく、自由に発言したり、気楽に質問や反論ができる雰囲気をつくります。
【その2】たくさんの「答え」がある体験をさせる
たとえば料理をすれば、「正解はひとつではない」という体験ができます。レシピを検索すると、同じ献立でもさまざまなつくり方があり、味の濃淡や風味のちがいがあることがわかります。
また、料理では想定外のハプニングが起きることもあるので、そのつど柔軟に対応し、試行錯誤する経験にもなります。
野菜や植物を育てたり、生き物を飼うことも、こうした経験につながるでしょう。読書や映画・芸術鑑賞、日常のニュースなども、家族でとらえ方の違いを共有することで、たくさんの視点があることを実感できます。
【その3】さまざまな人の生き方を教える
親子でさまざまな人と出会う機会をもつと、人生の楽しみ方、仕事のやりがい、失敗の経験やその乗り越え方など、多様な人生観に触れられます。
伝記を一緒に読むのもよい方法です。歴史に名を残すような人は、それまでの常識を疑い、たくさん失敗したり、周りから理解されず白い目で見られたりしながら、偉大な発明や発見をしています。
こうした人々のたどった道を知ることで考え方が柔軟になり、正解か不正解かで評価されない広い世界が見えてきます。
【その4】親も常識をアップデートする
親も、自分が正しいと思っていることが本当に正しいかどうかについて、少し冷静になって考えてみるといいかもしれません。
科学や歴史の世界で昔は常識だったことが、いまでは間違いだったとされていることもあります。ネットを通じてあらゆる情報が手に入るいま、子どものほうが新常識にくわしいということも珍しくありません。
親自身、新聞や本を読んで勉強し、自分たちの思い込みやこだわりをアップデートすることが大切です。
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり 』の内容を抜粋・編集したものです)
キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ『科学が教える、子育て成功への道』(今井むつみ、市川力訳、扶桑社)
飯盛聡士、榊原洋一、柞磨昭孝、林信行「あスコラ Vol.13 『心が動き出す問いづくり』」ベネッセ教育総合研究所
https://berd.benesse.jp/special/asukora/asukora_13.php