その結果、血圧は不快な画像が表示されている6秒間に上昇、画像が切り替わると低下し、花の画像が表示された時の低下幅は最大3.4%に達した。花の画像が表示された時の平均血圧は、青空や椅子の時に比べ約2mmHg有意に低く(P<0.05)、有意差のある状態が8秒間続いた。情動スコアについては、不快な画像から花または青空に切り替わった時に有意に上昇し(いずれもP<0.01)、マイナスからプラスに転じたが、椅子が表示された場合はマイナスのままだった。

 次に行ったのは、コルチゾール(ストレスホルモン)への影響を調べる実験。対象者は32人(平均年齢21.6歳)。不快な画像を4分間表示した後、花、または花のモザイク(使われている色は花と同じ緑や白など)を8分間表示し、唾液中のコルチゾール濃度を測定した。その結果、花を表示した時にコルチゾール濃度が約21%有意に低下した(P<0.01)。一方、花のモザイクを表示した時には有意な変化は見られなかった。

 続いて、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて脳活動を検討した。対象者は17人(平均年齢25.5歳)。不快な画像を表示した後に、花、花のモザイク、固視点(十字の印)を表示し、脳活動の変化を比較したところ、花を表示した時のみ、脳の右半球の扁桃体から海馬にかけて活動が有意に低下することが判明した(P<0.05)。海馬は記憶に、扁桃体は情動に、それぞれ重要な役割を果たす領域であることから、花の画像を見たことでこれら二つの領域の活動が低下して、不快な画像の記憶やネガティブな情動が抑制されたと考えられる。

 これらの結果から研究グループでは、「花の画像がストレス軽減に有効なことが明らかになった」と結論づけている。そのメカニズムとして、花の画像を見ることにより、ストレスから意識をそらす「ディストラクション効果(気そらし効果)」と呼ばれる作用が働いた可能性を考察している。

 なお、今回の研究には花の画像を用いたが、本物の「生花」は画像よりもストレス反応の低減により効果的であることが推察される。ただし生花の観賞が、血圧や心血管疾患、うつ症状などの改善に、どの程度寄与するのかは不明だ。望月氏は、今後の検討でこれらを明らかにしたいと語っている。(HealthDay News 2020年7月13日)

Abstract/Full Text
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0272494419304001

Press Release
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/135407.html

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