まず行ったのは、マウスのドパミン報酬系を人為的に直接活性化する方法。これには、DREADD(designer receptor exclusively activated by designer drugs)と呼ばれる脳の一部分のみを変化させる新しい技術を用いた。マウスを2群に分け、一方の群にはドパミン報酬系の中心的な部位である中脳腹側被蓋野という部分を、DREADDによって活性化させた。もう一方の群はこの処置を加えない対照群とした。5週間後、アレルギー反応を引き起こす免疫グロブリンE(IgE)を注射し、蕁麻疹様の皮膚症状が現れた面積を比較したところ、中脳腹側被蓋野を活性化させたマウスでは、対照群に比べて有意にその面積が小さかった。

 2番目の方法は、マウスの脳内報酬系を自然なかたちで活性化させる方法。これには、人工甘味料のサッカリンを用いた。2群に分けたマウスの一方の飲水ボトルにサッカリンを混ぜておき、飼育中のマウスが自発的に水を飲むたびに、その「甘味」によって中脳腹側被蓋野が活性化するようにした。もう一方の群には水を与えた。その後、1番目の実験と同様の方法でアレルギー反応を引き起こし、蕁麻疹様症状の範囲を比較したところ、サッカリンを混ぜた水で飼育したマウスは、対照群に比べて有意にその面積が小さかった。

 最後は薬によってマウスの脳内報酬系を活性化させる方法を試みた。これには、ドパミンの前駆体のL-ドパを用いた。L-ドパはパーキンソン病の治療にも使われており、脳内でドパミンに変換される。2群に分けたマウスの一方のみにL-ドパを注射し、前述と同様の手法で蕁麻疹様症状の範囲を比較したところ、L-ドパを注射したマウスは、対照群と比べて有意にその面積が小さかった。

 この結果について研究グループは、「前向きな精神状態を生み出す特定の脳内ネットワークが、アレルギーを生じる免疫のしくみと密接にリンクしていることを直接的に証明した世界で初めての知見」としている。そして「脳内ドパミン報酬系の活性化にアレルギー反応を抑える効果のあることが示された」と結論づけるとともに、「現在のアレルギー疾患の治療は投薬が中心だが、患者に前向きな気持ちを保ち続けてもらうよう、コミュニケーションを図ることも大切であることが示唆された」と付け加えている。(HealthDay News 2020年7月13日)

Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/all.14442

Press Release
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