2.「今日、何をすべきか」を決定するため

長期事業構想書をつくって目標を数字に落とし込むと、「その数字を達成するために、今(今日)何をすべきか」が見えてきます。

「どの事業もまんべんなく伸ばすのは無理だから、一番伸びている事業をさらに伸ばそう」など、現状の自社の実力値が明確になります。

長期計画は、5年後の自社の姿を決めるものではありません。

5年後の目標を達成するために、「今日、何をすべきか」を決定するためのものです。

経営は、「逆算」が基本です。

「過去計算」ではなく「未来計算」で考える。

経営計画を立てるときは、最初に結果を決め、結果を得るための手段を逆算して決めていきます。

ある社員が「5年後に都内で一戸建を買いたい」と長期目標を立てたとします。

目標から逆算して、「今の給料では無理だ」「今の貯蓄額では無理だ」とわかったとき、選択肢は絞られます。

・「武蔵野を辞め、もっと給料のいい会社に移る」
・「武蔵野で出世し、給料を増やす」
・「一戸建の購入をあきらめ、賃貸マンションに住む」
・「夫婦共稼ぎをする」
・「都内ではなく、郊外の物件を選ぶ」......

どうしても都内で一戸建を買いたければ、辞表を書くことが決まります。

当社に残りたいなら、「賃貸マンションに住み続ける」か、「頑張って出世する」のどちらかに決まります。

「5年後に都内で一戸建を買いたい」という目標をつくるから、「今日の決定」ができる。

投げたボールは、必ず落ちてきます。

現事業が伸びているとき、「天に向かって投げたボールは、そのまま月にまで届く」ように感じます。

でも実際は、ボールは必ず落下します。

多くの社長は、ボールが落ちてきてから「やばい、落ちてきた。次のボールを投げなくては」とあわてます。

しかし、追い込まれてから新しいことを始めても、「時すでに遅し」です。

今が好調でも、慢心しない、おごらない、満足しない。

「半年後、1年後、5年後にどうなっているべきか」を長期的に考え、変化を見据え、今やるべきことを決定するのが、経営の正しい判断です。

3.社員のやる気を促すため

人は誰しも、夢なくして努力しません。

会社が5年後も10年後も、「今期と同じ社員数、今期と同じ経常利益、今期と同じ事業内容」ならば、社員のモチベーションは上がりません。

社員は、「給料が安定的に上がる」「昇進のチャンスがある」と思うから頑張る。

長期事業構想書に「5年後に売上が2倍になる」長期計画を明記すれば、社員は「会社が大きくなれば、自分の職責も上がり、給料も上がる」と思い、夢と希望が芽生える。だから努力します。