起業家に大事なのは、
一生かけてどう社会に差分を残したいかっていうビジョン(斎藤)

スタートアップが成長する過程で、ゼロイチの起業家は、事業家、経営者へと自己変革する必要がある斎藤祐馬(さいとう・ゆうま)
デロイト トーマツ ベンチャーサポート 代表取締役社長。公認会計士
1983年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2010年より社内ベンチャーとしてトーマツベンチャーサポート株式会社の事業を立ち上げ、3年半で全国20拠点・150名体制への拡大に成功する。ベンチャー企業の成長支援を中心に、大企業の新規事業創出支援、ベンチャー政策立案に至るまで幅広く手掛けている。ベンチャー企業が大企業100名にプレゼンテーションを行う早朝イベントMorningPitch発起人。2019年より現職。著書に『一生を賭ける仕事の見つけ方』(ダイヤモンド社)がある。

田所 デロイト トーマツ ベンチャーサポートも、たぶん数多くの起業家支援をしていて、IPOも後押しされていると思います。僕は、起業家にになるには、戦略的泥臭さがとても大事だと思っていて、要は戦略性が高くても、そうと決まったらどこまでも泥臭くやる感じだと思うんです。でも、事業家になるためには、大局観が大事だと思います。フェーズ観とか、全体像が見えていて、かつそこから人・モノ・カネのリソース配分ができる、みたいなことです。斎藤さんは、よく渋沢栄一がお好きだとおっしゃっているんですけど、起業家から大きく産業をつくるような事業家になるために必要な大事な要素って、何だと思われますか?

斎藤 起業家に大事なのは、やっぱり一生かけて、人生をかけてどう社会に差分を残したいかっていう意味でのビジョン。登るべき山の頂点としてのビジョンと、登るためのガソリンとしてのパッション。これは不変の2つの大ベースだと思っています。

田所 登る場所?

斎藤 はい。ひと言でいうと人生でどんな差分を出したいか。これは登るべき山の頂点ですね。

田所 make a difference(違いをつくる)ですね。

斎藤 そうですね。次は登るために必要なガソリンとしてのパッション。それで、だいたいの起業家は、ビジョンはあるけど、どこかでパッションが尽きてしまうんです。

田所 飽きちゃうんですね(笑)。

斎藤 要は、火が消えていっちゃうんですよ。圧倒的に多いんですね。

田所 なんで消えちゃうんですかね?

斎藤 ビジョンの高さが足りないのだと思いますけど。それから、本気度。

田所 ソフトバンクの孫正義さんなんか、60歳になっても、「自分はまだ何も成し遂げていない」みたいなことをインタビューで言っていましたけど…。

斎藤 でも、だいたいもう周りがみんな、「いいね、いいね」ってなっちゃいますからね。ちょっと成功すると。

田所 ちやほやされて。これでよかったのか、みたいな。