新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
子どもの「養護性」を育む
人や動物、植物に対して、自分より弱いものを慈しみ、育て、世話をしたいと思う気持ちを「養護性」といいます。これは大人だけでなく、子どもにも備わっています。
養護性を感じ、世話をすることは、生きる活力の源になります。とくに生き物を飼うと、エサを求められたり、なでると喜んだりされるので、世話が報われることをダイレクトに感じられます。
生き物の世話をすることで、思いやりや愛情が芽生え、子どもの心も成長していくのです。では、賢く生き物を飼うにはどうすればよいでしょうか?
【その1】飼いやすいのは「魚」と「昆虫」
経済的な負担が軽く、鳴き声やにおいのトラブルもほとんどなく、手間がかからないのは魚と虫です。
飼いやすいのは魚ならメダカ、グッピー、金魚、虫ならダンゴムシ、カタツムリ、カブトムシ、バッタなどです。
【その2】「しつけ」をする
犬や猫を飼う場合には、言うことを聞かなかったり、飼い主を噛んだりすることがないよう、しつけをすることが欠かせません。
大手前大学現代社会学部の心理学者、中島由佳准教授は、ペットへの「猫かわいがり」は問題行動を起こす可能性を高めると忠告しています(『ひとと動物の絆の心理学』ナカニシヤ出版)。
動物は「つねに自分の要求が通る」と学習すると、自分は家族の中でトップだと思い込み、自分の地位を脅かすような家族の振る舞いをストレスに感じるようになります。
とくに生後3ヵ月を過ぎてからは、新しい刺激に対して好奇心より恐怖心を感じるようになり、不安から攻撃につながることがあります。「三つ子の魂百まで、ということわざは、動物にも当てはまるようだ」と中島准教授はいっています。
【その3】家で飼えない場合は「学校」で
中島准教授らの研究によると、家で動物を飼ったことがなくても、学校できちんと飼育することを学べば、子どもの心に動物を大切に思う心が育ち、人への思いやりにもつながることがわかっています。
学校では、子どもたちが世話をした後、抱いたりなでたりする「ふれあい」の時間をもつことが重要だと中島准教授はいいます。「ふれあい」の体験を通じて、動物が喜ぶことや嫌がることを学びながら、愛着を育んでいくのです。
【その4】犬に読み聞かせをする
アメリカでは、子どもが犬に読み聞かせをするプログラムがあります(読書介助犬プログラム)。
このプログラムでは、読むのが苦手な子や、友だちとうまくコミュニケーションを取れない子が、犬という忠実な聞き手を相手に、1対1で約15分間の読み聞かせをします。
子どもは他の子の目を気にしなくてもよいので、間違えてからかわれるというプレッシャーがなく、リラックスして読むことに集中できます。
子どもが言葉の意味を理解していないと思われるときには、「○○(犬の名前)はその言葉を初めて聞くと思うよ。どんな意味か教えてあげて」と言って、一緒に辞書を引いて調べます。犬を介在させることで、子どもは自分が知らなくても引け目を感じず、自分のペースで学習を進めることができます。
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)
中島由佳『ひとと動物の絆の心理学』(ナカニシヤ出版)
柴内裕子、大塚敦子『子どもの共感力を育む 動物との絆をめぐる実践教育』(岩波書店)
足立区生物園監修『魚を飼おう!』(ポプラ社)