たった10年で「雇う側」と「雇われる側」に分かれてしまう決定的な理由Photo: Adobe Stock

ほぼ能力が同じだった人間でも、たった10年で、会社をつくって雇う側と、雇われる側に分かれる。人材を選ぶ側と、人材として選ばれる側になってしまう。その差はどこから生まれるのか? 君はどちらになりたいだろうか?
生き方に迷う「若者たち」を圧倒的に肯定し、徹底的に挑発する、仕事論の新しいバイブル『僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義』にはその答えが書いてある。国内最大のシードファンド(300億円)を運営する、36歳、若手NO.1ベンチャーキャピタリスト・佐俣アンリのデビュー著作だ。
この本を読んだことがきっかけとなり、新時代のSONY、次のメルカリ、そして、今は誰も想像すらできない「未来の会社」が生まれるかもしれない。
読者対象は起業を目指す人だけではない。スポーツでもアートでも、趣味でも社会活動でも、もちろん目の前の仕事にでも、「熱」をもってチャレンジするすべての人に向け、その熱を100%ぶつけて生きてほしいという願いを込めて本書は書かれた。
ノウハウ本でも成功本でもなく、ただ「熱」をもつ人の暴走本能を刺激する本だ。
「熱を抱えた投資家として、たくさんの熱を見て、応援して、大成功も大失敗も見てきた自分がいまわかることをすべて詰め込んだ」と著者が語る本書のなかから、この連載では特に熱い部分を紹介していきたい。第5回は、10年後の差を決める「選択」について!

10年後の「格差」は、
今の君の熱が決める

 どんな偉大な起業家も、創業当初のビジネスなんてひどいもんだ。

 あのホリエモンだって、最初はホームページ制作業務だ。もちろん今のような誰でも気軽にウェブディレクターを名乗れる時代ではなかったが、起業家になりたければ「あの時代にしてはすごい」「先見の明がある」なんて言っちゃだめだ。

「俺でもこれくらいできるぞ」と笑ってやれ。

 僕の大好きな本に『ビットバレーの鼓動』がある。

 この本には、かつて渋谷がベンチャービジネスの集積地「ビットバレー」などという名前で呼ばれていた頃にそこにいた、サイバーエージェントの藤田晋や楽天の三木谷浩史ら43人のしょぼかりし頃が綴られている。

 いいか、「しょぼかりし」頃だ。「伝説の……」なんて言っちゃいけない。読むなら「こんなので成功できるんだ」と、寝っ転がって笑いながら読むくらいがちょうどいい。

 当時のサイバーエージェントの主力商品は「クリック保証型広告」。ウェブページに貼りつけるタイプのバナー広告で、ユーザーがクリックするたびに収入が入る仕組みのものだ。広告というとカッコよく聞こえるかもしれないが、単なるバナー屋である。

 藤田氏の「2000年以降は、インターネット自体をビジネスにするより、それをいかに活用するか、つまりマーケティングの時代に差し掛かっているんです」という発言も、今の輝かしい姿から考えると、どうもぱっとしない。

 どんなすごい起業家も、最初からすごいわけじゃない。投資家というのは、起業家の暴走を「砂かぶり」で見ることができるという特権があるんだ。だから断言できる。起業家全員、最初はしょぼい。

 それに成功して有名になったら、起業家は、自分のしょぼいスタートなんて自伝や記事に書かなければいい。そうすればその起業家は、才能にあふれた起業家として人々に記憶される。いいか、世に知られている起業家像や投資家像と、実際にやることは全然ちがうんだ。

 しかし覚えておいてくれ。君はまだ何もやっていない。起業家の成熟度ではゼロだ。起業というのは、自分の手で大きな規模の事業を実際につくったかどうか。それだけで決まる。

 僕は君に「べつに起業しろって言いたいわけじゃない」と言った。

 今はどうだ? ちょっとやってみたくなったんじゃないか?

 起業家のエピソードというのは、人の中に眠る熱を呼び起こすものがある。つまり起業とは、ロックなんだ。ステージで熱に任せて叫んでいる言葉に自分を重ねて熱くなる。そんな瞬間が、ANRIのアジトにはたくさんある。

 僕は、数多くの若き成功者たちをその学生の頃から知っている。もとはみんな、君と同じ、「普通」だった。僕が高校・大学でボート部で暴走していたのと大差ない、ちょっと血気盛んな、どこにでもいるただの学生だったんだ。

 僕は大学生の頃からずっとスタートアップに関心があり、周囲にはたくさんの起業家がいた。でも、僕もしょせんはただの学生だったんだ。結果的にベンチャーキャピタリストという道を選んだけれど、最初に選んだキャリアはリクルートだった。学生時代のまわりの優秀な友人たちがこぞって外資系投資銀行や大手メーカーに就職していくのを見て、流されるように選んだ大企業の就職先だった。

 それから10年の時間が流れた。

 気づけば僕は投資家になり、学生時代からの仲間であり、僕の投資先にもなっている起業家たちは『フォーブス』誌の表紙を飾り、世間に知られるベンチャー企業をつくった。そして、学生の頃に優秀だった人たちは、外資系やメーカーを辞め、今や彼らに雇用される側になっている。

 スタートは同じ、普通の学生だ。それがたった10年でこれほどの差がつく。

 この差をもたらした要素はふたつある。ひとつは、今は起業家にとって“そういう時代”だということ。もうひとつの要素は、この差が「能力の差」ではなく、「選択の差」によって生まれているということだ。

 たった10年で、ほぼ能力が同じだった人間が、会社をつくって雇う側と、雇われる側になる。人材を選ぶ側と、人材として選ばれる側になる。

 自分の熱にかけたか、「なんとなく外資や大企業」で選んだ就職かで、これほどの差が生まれるのだ。

 君はどっちのゲームを選ぶ?

 君に熱があるなら、これから先はすべて君次第だ。

佐俣アンリ(さまた・あんり)
たった10年で「雇う側」と「雇われる側」に分かれてしまう決定的な理由

1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。松山太河氏がパートナーを務める「EastVentures」にてFreakOut、CAMPFIRE等への投資及び創業支援を経て、2012年「ANRI」を27歳で設立。独立系ベンチャーキャピタルとして、主にインターネットとディープテック領域の約120社に投資している。VCの頂点をめざし、シードファンドとして国内最大となる300億円のファンドを運営中。現在の主な投資先は、LayerX、NOT A HOTEL、hey、Mirrativ、アル、Rentioなど。
2017年には、ビル一棟を使ってスタートアップを支援するインキュベーション施設「Good Morning Building by anri」を渋谷にオープン。投資先ベンチャーのオフィス、ミーティングルームやカフェなどがあり、ANRIを中心としたコミュニティが形成され、起業家のアジト、梁山泊の様相を呈している。日本ベンチャーキャピタル協会理事。ツイッターは@Anrit