◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

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 トラブルにはさまざまな種類のものがある。人間関係のトラブル、プロジェクトのトラブル、システムのトラブル、会社存続に関わる資金繰りのトラブルなど、さまざまだ。

 設立当初のベンチャー企業は「トラブルの総合百貨店」だ。ベンチャー企業はあらゆる意味で身軽で、物事の進むスピードが速い。一方で、トラブルを防ぐための機能が備わっておらず、不安定だ。トラブルを切り抜けていく中で共通して言えることが2つある。

(1)心を落ち着かせる

「やらかしたかも」。仕事歴の長いプログラマーであれば、一度や二度は血の気が引くようなミスをしたこともあるだろう。私自身も、アプレッソ設立初期の頃にそんな経験をしたことがある。

 開発の仕事をしていたときのことだ。自分のパソコンのデータベースにつないでいるつもりが、うっかりチーム全体で使っているデータベースにつないでしまっていた。手元の環境をクリーンアップしようとして、チーム全体で使っているデータベースの内容を全削除してしまったのだ。

 チーム内で利用しているデータベースなので、お客さまに直接的な影響があるわけではない。とはいえ、これまで相当な時間と手間をかけて蓄積してきたデータの入ったデータベースである。

「あれ、データが消えてる……?」

 そんな声に「もしや」と思って設定を確認したときには、もう遅かった。こんなとき、焦る気持ちから「これどうするんですか!!」とドンッと机を叩いて立ち上がって大声を上げても緊張感を高めるだけだ。

 大切なのは、まず正確に問題を把握し、関係者と共有したうえで必要な対策を検討していくことだ。慌てたところで問題は解決しない。それにチームが慌てふためくと、今後自分の仕事が原因で何か問題が起きても、怖くて言い出せなくなってしまう危険性だってある。

 だからどんな深刻なトラブルが起きたときも、いや、深刻なトラブルが起きたときであればなおさら、まずは心を落ち着かせなければならない。最悪なのはパニックになって「君はいつかこういうミスをすると思っていたんだ」「そもそもお前は普段の態度が許せなかったんだ」などと、今回の事象と関係ないところにまで話を広げて仲間割れ大会を起こすことだ。

 だからトラブルが起きたときの第一声は必ず「まずは落ち着こう」だ。