コロナ、米中関係の悪化、香港の自治への介入……こんな時代だからこそ、国内や足元だけでなく、広く世界の情勢に目を配ることが、長期的な展望にもつながる。人気連載「組織の病気」の秋山進氏がペルー駐箚特命全権大使(元上海総領事・前外務省研修所長)の片山和之氏と対談。前後編に分けてお送りする前編では、外務省研修所では何を教えているのか、そして、実はあまり知られていない「外交官」の仕事の中身、情報収集のコツや語学力の身に付け方について聞いた。(構成/ライター 奥田由意)
サイレント・パートナーと
言われた苦い過去
秋山 片山大使は先日まで外務省研修所長でいらっしゃいました。この外務省研修所というのは、実はあまり世間に知られていないようですね。私もご著書で初めて知りました。
片山 世界各国の日本大使館・政府代表部・総領事館に派遣されている外交官は、ほとんど全員が外務省研修所で研修を受けています。
この研修所は、1945年8月15日の第二次世界大戦の敗戦から約半年後、1946年3月1日に設立されています。それは大変厳しい情勢下でのことでした。というのも、日本は主権を喪失し、外交機能は停止していた。在外公館は閉鎖され、外務省は人員も規模も大幅に縮小していました。東京は大空襲を受けた傷跡そのままに一面の焼け野原だった時代です。よくぞ設立にまでこぎ着けたと思いますね。
秋山 当時日本はアメリカの占領下にありましたから、その占領軍との折衝や国際社会に復帰するための布石ということは無論ですが、それ以上のことがあったそうですね。