その発言は、意見か、事実(ファクト)か、通説か
バックグラウンドが多種多様であれば、多種多様な意見が存在します。グローバル社会では、そんな多種多様な意見が共存できるよう、自分の考えを述べるときも断定的な言い方を避け、またどのような性質のものかを明らかにすることが求められるのです。
具体的には、3つのやり方があります。
・自分の「意見」だと断りを入れる
・何らかの客観性のある「事実」(ファクト)として言う
・人が言ったこと、「通説」として扱う
自分の発言が「意見」なのか「事実」(ファクト)なのか「通説」なのかを明確にする、ということです。映画でもドラマでも「Is it your opinion, or fact?」(→それは意見ですか、ファクトですか)というセリフがよく出てきますが、つまりは意見なのか事実なのかが明白でないと、情報としての取り扱いが難しいため、発言の価値が低くなってしまうのです。
ここでいう「ファクト」とは揺らぎのない世界の真実、というような厳密なものではなく、発言者が「客観的に確からしいと思えること」というものを指します。つまり、話す人にとっては事実と思えるもの、ということです。
例えば、ウェブで「柚子よりレモンの方がビタミンCが多い」という情報を拾ったとします。厳密に考えていけば、この情報の信ぴょう性は判明しない部分があります。もしかしたらフェイクニュースかもしれませんし、そもそもビタミンCの測定にミスがあったかもしれない。その情報が「真実」かどうかを断定するのは難しいですが、出所(ソース)が確かだと思えるのであれば、発言の際に「ファクト」と区分します。
好きなことを言い合うのがグローバルの流儀ですが、それが意見なのかファクトなのか通説なのかを表明するのが、最低限のマナーです。
先述の「The best scenic spot in Japan is Mt. Fuji.」も、ファクトではなく意見だと明示すれば問題ありません。単なる意見であれば、どれが一番かは人それぞれだからです。
「I personally think the best scenic spot in Japan is Mt. Fuji.」(→個人的には日本の最高の景色は富士山です)、「To me, the best scenic spot in Japan is Mt. Fuji.」(→私にとって日本の最高の景色は富士山です)などと言えばよいわけです。
もしこれをファクトとして言いたいなら、「Former Vice President Al Gore said the best scenic spot in Japan is Mt. Fuji.」(→アル・ゴア元副大統領によると、最も美しい日本の景色は富士山とのことです)など、ソースを明らかにすべきでしょう。ゴア元副大統領が「主観」として述べたものを引用する形です。彼が発言したことは事実なので、それによって発言の性質がクリアになります。
あるいは、「According to a survey of Japanese college students, the best scenic spot in Japan is Mt. Fuji.」(→日本の大学生への調査結果によると、最も美しい日本の景色は富士山です)とデータを引用することで、客観的な事実として伝えることもできます。
通説として表現するなら、「多くの日本人は~」などの情報を加え、「Many Japanese people say the best scenic spot in Japan is Mt. Fuji.」とする手もあります。「多くの人がこう言っている」という形で、断定せず、曖昧でもない性質のクリアな発言となるわけです。
次回は、「意見」「事実(ファクト)」「通説」の具体的な文例を紹介します。
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。