あなたは「歯みがき」をいつしているか?正しいと思っていた歯みがきの習慣や知識も、じつは間違っていた可能性がある。連載5回目からは「歯」があなたの人生を左右するほど大事なことと、同時に正しいケア方法を最新歯科学に基づいて詳細に解説して話題沸騰中の『世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか』から正しい歯科知識やケア方法について紹介していく。今回は世にはびこる間違ったケア情報の1つである、「歯みがきのタイミング」について、その誤解を解こう。

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食後すぐに歯みがきしてOK!

 いつの頃からか「食後すぐに歯みがきをしてはダメ」という説が広まっています。

 その説は大まかにいうと、「食後は口の中が酸性の状態に傾いていて、歯の表面はミネラルが溶け出し軟らかくなっているため、食後すぐに歯磨きすると歯が傷ついて弱くなってしまう」とのことです。インターネットには「食後は最低でも30分経ってから歯みがきするように」などと載っている記事もあります。

 実際は、そんなことはありません。

 食事で一時的に口の中が酸性に傾いたとしても、すぐに唾液の作用によって酸が中和され、再石灰化がおこりますから、歯が溶けだすことはありません。つまり、食事の際に歯が溶けるという心配は無用ということです。

 ただし、例外があります。「プラークが付着している歯」だけは、食事中に歯が溶けます。歯がプラークで覆われていると、唾液が歯の表面に到達するのが遅れるため、その部位はしばらく酸性状態となり「脱灰」(だっかい=表面からカルシウムイオンやリン酸イオンが溶け出すこと)が始まります。特に、プラーク内部は糖を好んで酸を産生するミュータンス菌の宝庫ですから、飲食によって糖が投入されれば、すぐさまミュータンス菌が酸を産生して脱灰が急激に進行してしまいます。

「食後の時間を気にして歯みがき断念」こそNG!

 まとめますと、食事後の歯みがきが歯にとって悪いということは決してありません。むしろ食後に歯を磨いて食物残渣(食べかす)やプラークを除去することは歯にとって良い行為ですから、積極的に行ってほしいと思います。

「朝食後は10分もしたら家を出るから」、「ランチの後は午後の勤務開始まで15分しかないから」と忙しく、「食後は30分待ってから歯みがきなんて無理」と悩み、歯みがきを断念する人もいるようですが、そんな俗説を気にせず、食後の歯みがき習慣を続けてください。

 このほかにも『世界の一流はなぜ歯に気を使うのか』では、様々な歯にまつわる正しい知識、最新の歯科情報が満載なので、健康できれいな歯に関心のある方は、ぜひお手に取ってみてください。

森下真紀
歯科医師・歯学博士・株式会社日本歯科総合研究所代表取締役社長
東京医科歯科大学歯学部歯学科首席卒業。在学時、英国キングスカレッジ歯学部に留学。その後、東京医科歯科大学歯学部附属病院研修医を経て、東京医科歯科大学大学院入学し博士号取得。大学院在学中には日本学術振興会特別研究員も務める。株式会社日本歯科総合研究所を2017年に設立し、代表取締役社長に就任。「日本を世界一の歯科先進国へ」をミッションとして掲げ、歯科業界の発展に貢献すべく活動を行っている。