●伝達(コミュニケーション)

 これらの目的と貢献意欲を持つ個人の間にあって、それらを媒介するのが伝達(コミュニケーション)であり、そのコントロールタワー的な活動を行うのが管理者である。コミュニケーション的行為とは、共通目的と協働意欲を持つ人の間をつなぐ行為を現実化させる過程であり、具体的には、話したり書いたり聞いたりすることである。管理者の役割は、組織全体の目的を細かく再限定し、その目的が達成されるように、正しい時、正しい場所、正しい量、正しい方式で貢献者(主に従業員)の行為のコントロールをすることである。

 会社では、もちろん上司やリーダーが、部下に会社やその部署の活動の内容や達成すべき目的などを伝え、部下が迷わず、目的を遂げられるように導いたり、教えたり、せっせと働いてくれるようお膳立てをすることを意味する。

●貢献意欲

 個人は完全に組織の中に組み込まれているのではなく、本当は、組織とは別に(組織の外に)存在していて、そこで求められる活動を介して組織に貢献する。この協働活動に満足し、継続してエネルギーを供出してくれることが組織にとっては重要である。個人にとっては、一人でやるよりも、なんらかの利益があり、かつその利益が他の協働的機会から得られる利益よりも多ければ、その組織に貢献する行為を選ぶということになる。

 会社の社員は、その仕事をするときだけ組織に貢献しているのであり、行為を振り向けるべき候補対象は他にもいろいろあるのだ。したがって、会社のための行為をしてもらうためには、その仕事の内容に満足して、やる気を持ち続けてもらえるような誘因を会社が与えなければならない(そうでないと社員はやる気を他の対象に振り向けてしまう)。

●共通目的

 その組織の中で、何に向けて、人々の行動が調整されるのかが共通目的である。目的がなければ集まりようもないから、目的の必要性は自明ともいえる。普段の活動は、個々の単位組織(課とかチーム)で行われるから、現場の従業員は、組織全体の目的とともに、ブレークダウンされた細部の目的をも必要とする。また全体と細部の目的が一連のものとしてつながっていると認識されることも重要である。
 
 車を製造販売する会社があったとすると、「車を造って売る」のがその会社の大きな目的で、会社のさまざまな部署では、どんな車を造るのか考える、実際に車を造る、車を売る、車を売るためのサポートをするなど、大きな目的とつながった小目的を持っている。