コアメンバーとして一緒に働く人材は、
「スキル」より「MVVへの共感」の高さを優先させるべき

 こうした場合、左上の「MVVへの共感は低いが、スキルが高い」に該当する人に魅力を感じることはよくある。スタートアップは慢性的に人手が足りないので、即戦力になる人物を採用したい気持ちはよく分かる。

 しかし、ただ単にスキルが高い人材が必要ならば、外注か業務委託でも十分対応できる。その方が人件費を変動費にできるので、事業継続のリスクを下げることにもつながる。

 しかし、コアメンバーとして一緒に働く人材の場合には、「スキル」よりも「MVVへの共感」の高さを優先させ、将来の幹部社員となる人材を育てていくべきだ。

 第6回の記事で説明したスタートアップ・バランス・スコアカードでのMVVの位置づけを改めて見てほしい。

 MVVはスタートアップの活動の全体の土台になっている。MVVが明確だと、戦略も明確になり、「誰をバスに乗せるか」を決めるエントリーマネジメントが機能する。

 そういったメンバーは、エンゲージメントが高くなり、商品やサービスに魂を込めて仕事ができるため、カスタマーへの対応も格段に良くなる。結果、顧客の定着は高まり、財務パフォーマンスも良くなり、「正のスパイラル」が起きる。

 一方で、MVVを不明確な状態で放置すると、戦略も不明確になり、「誰をバスに乗せるか」を決めるエントリーマネジメントが機能しなくなる。結果、エンゲージメントの低いメンバーが集まり、商品やサービスに魂を込めることができないため、顧客への対応も悪くなる。結果、財務パフォーマンスも落ちてしまい、「負のスパイラル」に陥ってしまうのだ(下図)。

ミッション、ビジョン、バリューは実務において最強の武器になる【前編】

つづく