自動車業界では、大きな異変が起きている。コロナ禍で世界中の自動車メーカーが苦戦する中、「優勝劣敗」が明確になりつつある。例えば、テスラと日産自動車だ。テスラの株式は大きく値を上げて、時価総額ではトヨタを抜いて「世界一の自動車メーカー」になってしまった。一方、日産自動車はゴーン氏の不祥事の後、業績も株価も低迷している。そもそも日産はテスラと同じ「EVの先駆け」であり、むしろ、技術力ではテスラ以上の底力を持っているはずだ。なぜ、これほどの差がついてしまったのか。(トリオアセットマネジメント株式会社代表取締役 奥村 尚)
テスラと日産は共通点も多いが
全く異なる株式市場の評価
2020年7月1日、テスラの株価は大きく上がり、自動車メーカーで世界最大だったトヨタを抜き、世界一の自動車会社となった。テスラの時価総額は39.74兆円(8月24日時点)。4四半期連続の黒字となっているが、2019年度まで通期では黒字になったことはない.
一方、日産自動車(以下日産)は2020年7月、本年度の最終損益の見通しを過去最大の赤字6712億円と発表した。2019年度も同じ規模の赤字を計上している。株価は低迷をつづけ時価総額は1.76兆円(8月24日時点)。
私は、どちらの会社のクルマも数年間運転してきた。車の性格も、良いところも悪いところも知っている。クルマの特徴なども交えながら、アナリストの見地から見た会社価値、企業文化という目に見えないものをお伝えしたい。