ゲーム理論で、買い占め問題をより深く分析する
――現在はコロナ禍という状況ですが、ゲーム理論を利用して解決できそうな現象は、ありますでしょうか?
鎌田:安田さんとの共同研究では、買い占め問題を扱っています。既存の論考の中にもゲーム理論の視点からの考察はあるのですが、「買い占めするかしないか」のように2個しか戦略がなかったり、分析の背後にある仮定が強すぎたりと、粗い分析しかできていないというのが僕たちの印象です。そこで僕たちは、買い占め問題を分析するモデルを真面目に書き下して、分析することにしました。
どういうことかというと、実際の消費者がお店に行って在庫があったとき、「買い占めするかしないか」を迷うというよりかは、「何個買えばいいのだろうか」と葛藤するはずです。そして、この各消費者の個数の選択が、全体の商品の在庫量に影響を与えます。この点をモデルに組み込みました。少し細かい点に聞こえるかもしれませんが、このような正確なモデリングをすることで、明らかになる知見があることが分かってきました。
というのは、このようにきちんと分析した研究は、僕らの知る限りなかったんですね。きめ細かい分析から見えてくる発見が、今後政策提言に活かせるかもしれません。
安田:その研究過程では、「実際の消費者はこんな理由で行動を変えるのだろうか」などといつもツッコミを入れています。無事にモデルが解けたとしても、現実的な消費者感覚からあまりにもかけ離れていれば意義は小さいでしょう。「ツッコミを入れながら解いていく」というのは、研究を進めていくプロセスとして非常に重要です。