今回のコロナ禍の難しいところは、このフェーズが一方通行でなく、何度もループすることです。現在のようにようやく感染が沈静化してきたと思ったら、また感染者数が増えてきた、一段落したと思っていたところに、また他の場所から感染が再拡大した、というように、「2.初期段階」から「4.回復段階」までが何度も繰り返されます。
危機発生直後には、できるだけ直接的で指示的なメッセージが有効ですが、時間が経過するにつれて間接的で自発性を促すメッセージの方が受け入れられやすくなります。緊急事態宣言発令直後では「自宅待機してください」「テレワークに切り替えてください」という指示の方が、「あなたはどうしたい?」と聞くより現場の混乱を減らせました。
しかし、その数週間後から現在であれば、「どうすればより働きやすくなりますか?」と質問する方が、「始発で時差出勤できれば、そのほうが効率的です」「うちは子どもも家でZoomを使って勉強をしているので、できればビジネスホテルを借りて仕事をしたいです」といったそれぞれの希望が引き出せます。
それにより、部下一人一人の事情を反映した働き方が実現できて、全体のモチベーション維持にもつながるでしょう。中間管理職として、世の中や自分の部下が置かれているのがどのフェーズかを見極めたうえで、より効果的なメッセージの発信の仕方を心がけましょう。
そして、ぜひ忘れないでいただきたいのがセルフケアです。中間管理職の皆さんも、今回のコロナ禍では傷ついておられます。大けがをしている人に「大丈夫ですか?」と聞かれたら、「いや、私のことより、あなたは大丈夫ですか?」と言いたくなってしまうように、元気のない上司から心配されても、部下は自分の不安や悩みを言い出せなくなってしまいます。周囲に共感し、敬意を示せるよう、まずはご自身の心身の健康に気を配ってください。
(プリンシプル職場の心理学研究所所長、福島県立医科大学特任准教授 八木亜紀子)