では、「疲れるのはしょうがないのか?」「疲れない体は絶対に手に入らないのか?」。答えは「イエス」です。なぜなら、「人は疲れるもの」だからです。

 そう、100%疲れない強靭(きょうじん)な肉体を手に入れることなど不可能です。これをやればまったく疲れないという魔法のような方法も存在しません。

 しかし、今の疲れを100としたら、それを1にまで減らすことは可能です。なかなか取れない疲れから、今までの10分の1の時間で回復させることもできます仕事量をセーブすることなく、ビジネスアスリートとして第一線で働きながら、です。そのための方法を、私は皆さんにお伝えしたいと思います。本書をご覧いただければ、疲れを最小限に抑え、かつその疲れからV字で急速に回復する方法を手に入れることができるのです。

疲れからのV字回復で
仕事の成果がグングン上がる

 なぜ私が皆さんに本書で「疲れから最速で回復する方法」をお伝えしたいのか。実は私自身、先に述べたとおり医師であり経営者であり、そしてコンサルタントでもあるという「3足のわらじ」を履いたビジネスアスリートだからです。

 私は、外科医で医師人生を始めました。昼夜を問わず手術や急患で眠る暇もないほどの毎日を過ごしたあと、一人でも多くの命を救うためにはもっと根本的に病の発生やメカニズムを知ることが必要だと思い、大学院の関係機関で病理専門医(がんの診断を専門にする医師)として働き始めました。約10年もの間、第一線の医師として現場に立ったあと、「医療機関の経営」という根本的な改革に興味を持った私は、医師として働きながら、慶應義塾大学大学院(慶應ビジネス・スクール)に通う決心をしたのです。そして在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立、現在も日本各地の病院の再建に取り組んでいます。その一方で、今も臨床業務をしており、日々患者さんと接しています。

 そんな経歴の中で、医師の視点とビジネスパーソンの視点を併せ持った私だからこそ、気づいたことがたくさんありました。その中の一つが、まさに私が本書を書こうと思ったきっかけ、「なぜ、ビジネスシーンで疲れない人と疲れる人がいるのか」です。そして、その疲れない人は必ず仕事ができる人、そう、俗に言われる「一流の人」だったのです。つまり、ビジネスで成功している人を観察していると、能力や仕事の効率だけでなく、医学的な視点からも仕事でハイパフォーマンスを出している理由が導き出せたのです