実は私自身、ビジネスを始めた頃は疲れがなかなか取れませんでした。すべてが新しいこと、学ばなければいけないことの連続で、まさに休む間もなく働き続けていました。でも、あるときそれがいかに非効率かということに気づきました。先に述べたように、バリバリと働き、成果を出している人たちと出会い、彼らの生活を観察すると同時に、医学的視点を駆使して疲れの正体を知り、分析し、トレーニングすることで、おかげさまで今では疲れてもすぐに回復でき、疲れが仕事のパフォーマンスに影響することもほとんどなくなりました。つまり、疲れのV字回復法を知ったのです。私がうらやましいと思っていたハイパフォーマーの人たちも、実は疲れていないのではなく、疲れからのV字回復法を実践されていたのです。その工夫ややり方を何人かの患者さんや友人のビジネスパーソンに紹介したところ、「疲れから回復しやすくなった」「自分の疲れが見えるようになった」「疲れやすいタイミングを見極められるようになった」と多くの声をいただき、以前より効率的に仕事ができていると嬉しい報告を受けています。もちろん、医師という立場もあるので、○○するだけで疲れない体が手に入る、○○を飲めばもう疲れません、などという不確かなことは言えませんし、言いません。私が本書でご紹介するのは、自分の体の声を聞くちょっとの工夫で疲れをコントロールし、ビジネスでのパフォーマンスを向上するきっかけをつかむことができる、とても簡単でシンプルな方法論です。そしてそのツールとなるとっておきの習慣が「カラダ手帳」です(忙しくてじっくり一冊読む時間がないという方は、ぜひ第5章だけでも先に目をとおして実践してみてください。確実に変化が表れるはずです)。

 全身倦怠感、やる気が出ない、風邪がすっきりと治らない……疲れは様々な体の不調を引き起こします。しかもそれだけではありません。「疲れ」はビジネスでのパフォーマンスを格段に下げてしまいます。例えば、全身がだるいとプレゼンでのキレがなくなったり、風邪がすっきりと治らないと締め切り直前の書類を完成させるにも集中力が出てきません。私たちはそんなビジネスパーソンの大敵とも言える「疲れ」にこそ、もっとフォーカスするべきなのです。

「人は疲れる」のです。大切なのは、そのことを認めること。実はこの事実を認めているか認めていないかの違いで大きくそのライフスタイルは異なります。私は医師の仕事を通じて、多くのビジネスパーソンが疲れている自分の体にムチを打ち、働き続ける姿を見てきました。結果、だんだんと体の底に無理が溜まり、最終的には病気になってビジネス戦線を離脱する人がどれほど多いことか……。

 ビジネスは長期戦です。20代の方はこれからますます忙しくなります。30代の方は仕事がどんどん面白くなってくる時期です。40代は責任ある仕事がさらに舞い込んでくる年代です。そして50代からは、仕事の新しいやりがいが増えてくる頃でしょう。そう、ビジネスアスリートにとって「疲れ」で、時間とエネルギーをムダにしている暇はありません。そのためにも「疲れから最速で回復する方法」を手に入れる必要があります。

 ビジネスはパフォーマンスを上げてナンボの世界です。そして、パフォーマンスを要求される波はご自身の体調と関係なく押し寄せてきます。その波に打ち勝つためにも疲れからのV字回復を実現し、どんな仕事でも“どんと来いっ!”と備えておける体を作るべきなのです。

裴 英珠

ダイヤモンド・プレミアム(初月無料)で続きを読む
Amazonで購入