例えば、ホームページ上に「お役立ち情報」を掲載し、その資料を無料で渡す条件として、企業情報や個人情報の提供を設定します。そして、その資料をダウンロードした顧客に対し、タイミングよく電話をすることによって、相手の都合に関係なく電話をかけていたアナログ時代と比較して、10倍のアポイント獲得率が得られたなどの事例もあり、大変革が起きています。いわゆるマーケティングオートメーション(MA)です。

 次に「商談フェーズ」についてです。最近は新型コロナの影響もあり、オンラインでのアポイントや商談が増えています。オンラインのアポイントでは、対面のアポイント以上に顧客の時間や効率に対する意識が高まり、顧客視点の目的がないと顧客に会えなくなっています。

 既存顧客のフォローやお客様からの問い合わせへの対応は、移動がなくなったことで生産性が上がっている部分もありますが、新たな商談や新規顧客の開拓はとても難しくなっています。だからこそ、先ほどの探索フェーズの対応ができる会社とそうでない会社で差がより広がっているのです。

 仮にアポイントが取れた場合も、昔はとりあえず行くというスタンスの営業も少なくありませんでしたが、顧客の効率意識の高まりから、アジェンダ設計と有効な議論をする資料の用意がより重要になっています。また、複数人で商談をする場合は、オンラインでは社内関係者とアイコンタクトなどのあうんの呼吸が成立しないので、アポイントの目的やゴールの合意、誰が商談のファシリテーションを行うかなど、役割分担を事前に決めておくことが大事になります。ファシリテーション能力はアナログの時以上に重要になっているのです。また、アポイント後に次回に向けた打ち合わせを社内関係者で設定しておくなどの段取りもとても重要になります。

 最後に「アフターフォローフェーズ」の話をします。「アフターフォローフェーズ」は「カスタマーサクセスフェーズ」と言い換えることもできます。「カスタマーサクセスフェーズ」とは、売った後の活用支援などのアフターフォローです。売って終わりではなく、顧客の成功にコミットし、顧客の成功を起点に商品・サービスや顧客接点を進化させ、最適化させることです。例えば、あるパーソナルトレーニングジムのように、健康器具を売ることがゴールではなく、顧客を美しい体にすることをゴールにすることを指しており、顧客の成功に価値を設定し、そこにコミットし、手法を磨き、価値を実現できることを証明できた企業は、価格を倍にしても売ることに成功しています。

 つまり、「営業=売って終わり」ではなく、顧客の成果を証明することで、その評判が新規顧客の獲得につながり、探索フェーズがさらに効率化するなど、ぐるぐるとこのプロセスを回すことが大事になります。この価値提供プロセスをどう設計し、役割分担し、磨いていくか。それに着手する会社と、旧来の売って終わりの会社では、これから取り返しのつかない差が生まれるでしょう。